2021/12/6
インタビュー
――ニューアルバム「Kongtong Recordings」は、非常に幅広いタイプの楽曲が揃っていますが、作風については制作前から具体的なイメージを描かれていたのでしょうか。
いや、本当にタイトル通り、混沌とした状況の中で変化を重ねながら作っていました。コロナ禍でライブが飛んだりする中、「音楽家は社会に居場所がないんだな…」って感じたりしながら、それでもスタジオに入ってレコーディングしていることで救われる感覚もあって。迷いもあったけど、充足感のある音遊びをしながらここまで来た感じです。
――1曲目の「All the little things」の明るい曲調が驚きでもあり、ポジティブなエネルギーに満ち溢れているような印象を受けました。
当初は、ちょっとダークな作品にしようと思っていたんです。ラストの「衝撃」という楽曲はアニメ「進撃の巨人」The Final Seasonのエンディングテーマですが、コミック最終巻が出て改めて、あの作品の本当の終わりを描きたくて「Goodbye Halo」を作り、あの曲のような内省的な世界で統一するつもりでした。だけど、だんだん気持ちが揺らいできて「こんな時だからこそ明るい曲を歌いたい、鬱屈した感じを吹き飛ばしたい!」と思って作ったのが「All the little things」。この曲ができたことで、アルバムのイメージが明確になりましたね。
――全体を通して空間性のあるサウンドメイキングをされているように感じたのですが、アレンジを担当されたShigekuniさんとは、方向性についてどのようなお話をされましたか。
基本的に打ち込みが多い中で、「この曲は人間が奏でた方がいいよね」みたいな感じで話をして、曲に合わせて都度、対応を変えていきました。「All the little things」は、ディレクターから「カーペンターズみたいな感じにしましょうよ!」と言われて、よっしゃ!って感じで(笑)。「ReadyReady」は、私が作った安いサウンドのデモをShigekuni君がコラージュしてくれたもので、「少女小咄」なんかは昔からある曲ですが、ガチャガチャすると曲の力が弱くなると思い、極力シンプルな編成にして歌や言葉が際立つようにしています。
――苦労されたポイントなどは?
「UtU」は、明るい曲が作りたいということでShigekuni君がオケを作ってくれたけど、ただサウンドに合わせたような言葉を並べるのは空虚な気がして、しばらく歌詞が書けなかったです。そうやって悩んだ時期を経て、当時の鬱屈した思いを素直にそのまま綴ったら、やっとハマりました。
――さまざまな紆余曲折があったことで、アルバム完成の手応えもひとしおだったのでは。
自分が作業を楽しめ、なおかつ人が聴いても閉塞的ではないポップスというか、ある程度、間口の広い作品ができたのではないかと思います。私の場合、聴きやすさに偏ると自分の心が遠のくし、好きなことだけやっていると近寄りがたいものになる。今作では、そのバランスを両立できたかなと思っています。
――2022年の年明けにはアルバムを携えてのライブが控えています。セットリストのイメージなどは固められていますか?
基本的には、この作品を人前で奏で、みなさんと体感することがメインになると思います。あとは、これまでのキャリアの中で作ってきた音楽が、今の自分のどこにフィットするのか確認する作業も入り混じってくるのかなと。バンド編成でのライブは2020年のクリスマス以来。久しぶりすぎてドキドキしますね。
――大阪公演に足を運ぶお客様へ、メッセージをお願いします。
アルバムでレコーディングしたものがライブのアレンジを施すことで演劇性が増すというか、暗い部分と明るい部分のコントラストがはっきり出てくると思うので、そこは、ぜひ注目していただきたいです。私も年齢を重ねてくだけてきたし、リラックスしながら聴いてもらえたら嬉しいですね。
あと、会場が大阪城のすぐ近くということで、お城見学も楽しみにしています(笑)。
TEXT:伊東孝晃
安藤裕子
安藤裕子 LIVE 2022 Kongtong Recordings
日時:2022/01/16(日)17:00
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
公演詳細