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【取材会レポート】佐々木蔵之介 Team申 第5回本公演『君子無朋~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』

2021/8/6

取材レポ

Team申 第5回本公演『君子無朋~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』

「演劇的に絶対面白くなる」と確信
“えにし”を感じる最終地・京都へ

大学在学中から演劇に携わり、長年舞台に真摯に向き合ってきた佐々木蔵之介。彼が主宰する演劇ユニット「Team申(さる)」の11年ぶりの本公演、『君子無朋(くんしにともなし)~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』が、東京、仙台など7都市での公演を経て、最終地・京都で8月17日~29日まで上演される。

中国の歴代皇帝約200人の中でも知る人ぞ知る雍正帝(ようせいてい)。18世紀、清の第五代皇帝となり、1日20時間執務室にこもって働き続け、最期は過労死したと言われる暴君だ。テレビのドキュメンタリー番組『中国王朝 英雄たちの伝説』の中国ロケで、この「最も口が悪く、最も勤勉で、最も孤独な中国の皇帝」に出会った佐々木が、「ユニークな彼を作品にできないかと、ディレクターの阿部(修英)さんに北京で相談しました」と即行動。中国の歴史に詳しい阿部が戯曲を手掛け、劇団桟敷童子を主宰する東憲司が演出し、佐々木自ら雍正帝を演じることになった。
「広大な中国の世界を、一つの執務室を舞台に地方官との手紙のやり取りを通して舞台化しようと思いました。その手紙、言葉の応酬がバトルのようになり、この言葉こそ演劇的に絶対面白くなるはずだと。バトルはアクションシーンのようでもあり、身体ではなく頭脳と集中力を使いますが、お客様にとても楽しんでいただけているなと感じます」

出演者は、名家出身の若き地方官・オルクを演じる中村 蒼や、奥田達士、石原由宇、河内大和という演技派の俳優たち。中村以外は、皇帝や皇子など一人でいくつかの役を演じ分ける。
「例えば皇帝に礼をするときは、手先からひじまで床にピタッとつけて、頭をゴンゴン床に打ちつけてその音を皇帝に聞かせるらしいです。蒼くんが実際舞台でやっていますけど、初めての中国劇、いろんな所作があるのだなと思いました。特筆すべきは弁髪(べんぱつ)! 腰あたりまである弁髪が前に垂れてきたとき、どう直していいのか所作が分からない。お客様も物珍しいと思うのですが、だんだん見慣れてくると思います(笑)」

これまで『リチャード三世』や、20人の登場人物を一人で演じ切った舞台『マクベス』など、暴君を演じることはあったが、中国皇帝は「天子=天の子」という存在であり、過去に演じてきた役柄とはスケールが違うという。
「広大な中国を一人で治める。今まで演じたことのない責任感の大きさを感じます。自分は人間ではなく“天の子”だと言い切る彼の辛さ、孤独は演じてみて初めて分かりました。彼は大臣などをすっ飛ばして、現場の人間とひたすら手紙のやり取りをし、赤ペン先生のように細かいところにこだわって罵詈雑言を浴びせる。でも結局彼は人を信じ育てた人で、自分のやるべき仕事、役割、覚悟をものすごく持った人だと思います」

舞台では雍正帝が玉座につき、13年間即位して最期を迎えるまでが描かれる。そこには、「彼がなぜ皇帝になれたのかというミステリー」も組み込まれ、どんでん返し的な面白さも。さらに「300年前の中国の話が、今のこの時代の話になった」と、作品の普遍性を感じるという。
「雍正帝の父の時代に領土を広げ過ぎてしまったせいで、彼は経済など色々な危機に直面している。今も世の中は(危機に)直面していますが、雍正帝は国の未来をどうすべきか、ということを考えた。国のリーダー論みたいなものを、彼を通して見ることができました。ただお客様は中国の歴史ものだから難しい、と思われなくて大丈夫。知識ゼロでいいです! 前半は笑ってもらえるような芝居が続きます。『Team申』は、手作り感のある愉快な芝居を目指しています」

京都は佐々木の地元であり、本作誕生のきっかけとなった『雍正帝 中国の独裁君主』の著者、宮崎市定氏(京都大学名誉教授)の縁の地。
「何か“えにし”を感じる京都公演。一体感のある劇場でぜひ一緒に芝居を楽しんでください」

取材・文:小野寺亜紀

INFORMATION

Team申 第5回本公演
『君子無朋~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』

作:阿部修英
演出:東 憲司
出演:佐々木蔵之介 中村 蒼
奥田達士 石原由宇 河内大和

日時:2021/08/17(火)~2021/08/29(日)≪全17回≫
会場:京都府立文化芸術会館
公演詳細

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