2021/7/24
取材レポ
中島:20年ぐらい前から安倍晴明の話はやりたいなと思っていて、いのうえ歌舞伎を中村倫也くんの主演でとなったとき、「倫也くんで安倍晴明がいいな」と思いつきました。ライバルには、一見陰陽師で実は九尾の狐という向井理くんが、烏帽子も似合うしいいなと。その男たちの中に、狐の霊という吉岡里帆さんが入ってくる。自分の観たいものを堂々と書こうという形で進んでいきました。
いのうえ:満を持して、フルスペックのいのうえ歌舞伎を全力でやりたいと思います。今回はあやかし、妖術や魔術が出てくる、昔の『阿修羅城の瞳』や『BEAST IS RED~野獣郎見参!』あたりのファンタジー色が強いいのうえ歌舞伎となっていて、仕掛けなど色々と面白い舞台になると思います。
中村:共演者が決まったとき、とても面白いものになると思いました。バランスのいいカンパニーになるんじゃないかな。昨日本読みをやって、すごく楽しかった。古くからの新感線ファンのお客さんも楽しんでいただける内容になる予感がしました。いい舞台を作れるように、これから一日一日稽古を頑張っていきたいです。
吉岡:昨日の本読み初日はすごく緊張しました。今回、私が唯一新感線初出演らしく、足手まといにならないよう頑張りたいです。某CMでキツネの役を何年かやらせていただいているのですが、台本を読むと私の知っているキツネとは全然違う印象で……(笑)。妖怪がたくさん出てきて、不思議な世界観にお客様もスっと引き込まれるのではと感じました。
向井:僕はこれが新感線さん二度目のオファーで(2017年の『髑髏城の七人』Season風 以来)、一度目で嫌われていなくて良かったと思いました。前回は本当に鍛えられ、経験したことのないエンターテインメントをやらせていただき勉強になりました。今回は膨大な台詞の量に溺れそうになっていて大変ですが、僕の経験上、役者が苦労している作品こそ、観ている人は楽しめるものだと思っているので、2ヵ月稽古に励んでいきたいです。
――それぞれご共演歴がある3人ですが、お互いへの期待などは?
中村:吉岡さんは間違いなくキュートな狐ちゃんになるだろうし、知恵比べというシーソーゲームの中で、牧歌的な瞬間を見せてくれると期待しています。向井くん、“おさむっち”は俺がデビューしてすぐのときに戦争映画で共演して。
向井:倫也がまだ18歳とかだったよね。
中村:“おさむっち”が世の中でブレイクする前だったけど、戦争映画なのにシュッとしててやっぱり当時から目立ってた。その頃からなつかせてもらっているので、すごい楽しみです。ド悪役の発声をしてもらいたいですね!
向井:(中村が主演ということで)あの、弟みたいな小生意気なガキが大きくなった(笑)。もちろん懐かしさもあるけど、お互い十何年お芝居の世界でどっぷりやってきているので、刺激し合えればいいなと思います。
吉岡:私は本読みの第一印象で、中村倫也さんの安倍晴明から少年性とピュアな感じを受け、愛さずにいられない人だと感じました。でも、晴明の魔術を使うようなあやうい部分も混在し、中村さんのイメージにぴったり!と。
中村:俺、魔術使えそう?(笑)
吉岡:使えそうです(笑)。向井さんはドラマでご一緒したとき、私がものすごくいじめられる役だったので、怖い表情が刷り込まれまして。
向井:一言一句、台本通りやっていたんだけどね(苦笑)。
吉岡:すごく素敵な先輩だとは分かってるんです! 今回、因縁のある関係の二人なので、そこは(ドラマでの印象を)活かして反撃できるように頑張ります(笑)。
――やはり役柄は当て書きですか?
中島:もちろん当て書きです。向井くんは、一見いい人なのに実はすごく悪い、という二面性を見てみたかった。知恵比べなので、普段の新感線ならアクションでやるところを、台詞の応酬みたいになる部分があり大変だと思いますが、男二人のやり取りが“サスペンス”になる中で、吉岡さんが“癒やし”の存在に。でも実はタオが話を引っ張っていく、という関係性を楽しんでいただければ。
いのうえ:演出も色々考えていて、最後に向井くんが小林幸子さん的な出方をします!
中島:それ、いきなり言っちゃうんだ(笑)。
いのうえ:まあ、九尾の狐ですから。ようするにラスボスのような、ドーンと出てくるイメージです。そこは楽しみにしていてください。
向井:歌うわけではないです(笑)。
――衣裳をつけてヴィジュアル撮影をされた印象は?
中村:動きづらそうだなと。後半はもっと身軽になっていくという設定はないのかな(笑)。
吉岡:キツネ歴が長い私としては、尻尾が大事で、どうなるのか気になります。どれだけモフモフとした、いい尻尾を持っているか。
中島:モフモフはキーワードですよね。
向井:僕は、去年の大河ドラマで烏帽子をつけて大立ち回りをしたのですが大変だったので、烏帽子が飛んでしまわないか心配です。
いのうえ:そのへんも考えつつやっていきます!
――王道のいのうえ歌舞伎だからこそ、大切にしたい部分はありますか?
吉岡:先ほど、私のパートを牧歌的と言っていただきましたが、やはり“緩急”なのかと思います。新感線の舞台は笑えるところの物量がしっかりあって、お客さんが飽きずに楽しんで観られるので、そういう笑いのパートを大事にしたいです。
中村:トントンとテンポよく進むなかで、見得を切るところはしっかりと、メリハリがつけばいいなと、最初台本を読んだとき思いました。また、全部に情感を込める芝居をすると損する作品だなとも思いました。
向井:僕が個人的に新感線を観て思うのは、シリアスとコメディのバランスはもちろん、エンターテインメントを極めようとする姿勢がすごくストイックだと思います。度肝を抜く演出や効果、お客さんをことごとく裏切り、ハードルを越えていく凄まじさを感じます。だからこそやる側は大変なので、その苦労の反動で楽しませていきたいです。
吉岡:私は初挑戦の新鮮な気持ちで臨んでいますが、本読みの段階から「面白いぞ!」と感じています。いろんな仕掛けが待っていると思いますので、ぜひ劇場に楽しみにお越しください。
中村:こういうご時世ですけど、面白いものを作るために頑張るのみです。チケットを買ってくださった皆さんが、無事に当日楽しめるように願っています。
取材・文:小野寺亜紀
撮影:田中亜紀
■作
中島かずき
■演出
いのうえひでのり
■出演
中村倫也 吉岡里帆 / 浅利陽介 竜星 涼 早乙女友貴 / 千葉哲也 高田聖子 粟根まこと / 向井 理
右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ
磯野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ 村木 仁 川原正嗣 武田浩二
藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平 北川裕貴 紀國谷亮輔 下島一成
鈴木智久 武市悠資 山﨑翔太 渡部又吁 小板奈央美 後藤祐香 鈴木奈苗 森 加織
2021/10/27(水)~2021/11/11(木)≪全15回≫
オリックス劇場
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