2021/7/23
インタビュー
京都市立芸術大学ピアノ科卒業、ウィーン国立音楽大学大学院ピアノ演奏科修了の経歴の持ち主。2歳でピアノを始め、『のだめカンタービレ』の漫画を読んだのはピアニストになることを決心した10歳のころだった。「マニアックで閉鎖的なクラシック業界のことがリアルに描かれていて、音楽をやっていない友達からも面白いと大人気で子ども心にうれしかったですね。音大の実態はこうなのかと知り、実際に進学すると、周りの学生は皆、のだめに出てくるキャラクターにあてはまるほど変な人が多かったです(笑)」
31日は千秋の母の実家の三善家をのだめと千秋が訪問するエピソードを取り上げ、前半はエルガーの『威風堂々』などの有名曲を特集。原がヴァイオリニストの松田理奈と初共演するエルガーの『ヴァイオリン・ソナタ 第1楽章』は、「パッションあふれる作品で、ヴァイオリン・ソナタといいますが、ピアノと丁々発止のやり取りがあり、松田さんとのぶつかり合いから何が生まれるか楽しみです」と期待を寄せる。後半は、オーケストラや松田がビゼーのオペラ『カルメン』の世界に誘う。作曲家・ヴァイオリニストのサラサーテが『カルメン』を元に作曲した『カルメン幻想曲』と、ビゼーの『カルメン』がメドレーのように演奏される珍しい構成だ。
1日は千秋と、世界的ピアニストとして描かれている千秋の父・雅之に焦点をあてる。バッハの『ピアノ協奏曲第1番 第1楽章』を披露する原は、「この時代は今のピアノがなく、チェンバロのために書かれた曲。バッハはピアノの音を聞いていなくて予想もしていない。当時、バッハが思い描いていた音や表現法にどう近づけていくかが、研究しがいがあり楽しいところです」と言う。
また、ブラームスをはじめとするウィーン世紀末の音楽やエゴン・シーレらの絵画が大好きで、その思いを自身のYouTubeチャンネルで関西人らしい突っ込みを入れながら熱く語っている原。当日はブラームスの『6つのピアノ小品 第2番 間奏曲』を演奏する。「ブラームスはロマン派の作曲家らしくきれいなメロディを書く。エルガーのようなパッションではなく、どこか抑えられた内向的な作品ですが、内に込めた熱い気持ちがあるんです。フレーズや楽譜の指示がとても細かくて、一つひとつを読み解くと、ブラームスが心からしゃべっている声が聞こえてきそうなんです」。また、ブラームスは楽器や体のことをよく考えて作曲しているため、手を痛めることがないという。「ショパンもそうですね。個人的な意見ですが、ベートーヴェンやシューマンはあまり考えていない気がします(笑)。でも、それはそれで、作曲家が自分が鳴らしたい音を優先しているので弾きがいがあるんです」
さらに、オーケストラと奏でるラヴェルの『ピアノ協奏曲』は、ラヴェルがジャズやガーシュウィンから影響を受けたことが分かるキラキラとした華やかな楽曲だ。「ファゴットやトランペットなど色んな楽器とやり取りするので、そこも注目してほしいですね」。
事前に作曲家の自伝などの本を読み、その背景を知ることを心掛け練習に励む。「作者の人生を知らなくても弾けますが、その人自身に興味がある。小さいころからピアノを弾いていると練習曲みたいになりがちなので、心がある作品であることを忘れないようにしたいんです。今回ものだめの漫画を全巻、一気読みします。その日は練習しないかも(笑)」。
TEXT:米満ゆうこ
生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会
2021/07/31(土)15:00
2021/08/01(日)15:00
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
公演詳細