2021/5/25
取材レポ
コンサートは小説の内容を8分割して構成。今回朗読に初めて挑戦するという川栄李奈による朗読パートの後、内容に沿った音楽をオーケストラが演奏し、また朗読パートが始まる。一部音楽と朗読が被さりシンクロする場面もあるが、基本的に音楽を朗読のBGMにするのではなく、それぞれを独立して堪能できる構成になっている。
柴田「幼い姉妹を主人公とした、不可思議でミステリアスな世界観を朗読で表現するにあたり、ご本人の持つ雰囲気と演技力の観点から川栄李奈さんに朗読をお願いしました。舞台上にはスクリーンを設置し、朗読パートでは読み上げられている小説の文章を、音楽パートでは小説の内容をイメージした映像を映します。選曲については、今回はフランス楽曲を中心に選曲しました。作品の世界観にはクラシックらしいリズミックでくっきりはっきりした曲よりもフランス楽曲が持っている夢見心地のような独特の浮遊感がきっとマッチすると思います」。
今回執筆依頼を受けた時、想像もしていなかった革新的な取り組みに驚いたものの「いつも通り小説を書こう」と平常心で挑んだという藤野。しかし、初めて訪れたロームシアター京都で大きな衝撃を受けたという。
藤野「『ねむらないひめたち』は、今よりほんの少しだけ未来の日本が舞台で、タワーマンションに住んでいる姉妹が主人公の物語。なぜタワーマンションが舞台かというと、今回お話を頂いてロームシアター京都にお邪魔した時に、あまりに4階席が高くて…(笑)私は高いところが苦手なので、すごく怖くて、印象的だったんです。なんとかこの“高さ”というものを作品の中に取り入れたいと思いました」
意外なところから着想を得たこの藤野のエピソードに、指揮者の三ツ橋は作風とのギャップに驚いた様子を見せた。
三ツ橋「今日初めて藤野さんとお会いしましたが、活字として小説を読んだ時は、こんな(ユーモアあふれる)お人柄だとは思いませんでした(笑)『ねむらないひめたち』の中で流行する奇病と姉妹たちが抱える想いや行動が、今の世の中の人々が抱えている感情とどこかリンクするのですが、やはりファンタジーで…現実とファンタジーの世界をずっと彷徨い続けているような不思議な世界観に引き込まれます。私たちが演者として舞台上で組み立てていく世界、川栄さんの朗読やスクリーン演出によって作り上げられる世界、観ている皆さんが頭と心の中でクリエイトしていく世界。今回のコンサートにはたくさんの世界があります。私自身も京都市交響楽団の皆さんと作り上げる世界に、とてもわくわくしています」
言葉と音と映像が織りなす『ねむらないひめたち』の不思議な世界。観るもの一人ひとりの中で生まれ、広がっていく新たな物語をぜひ生で体感してほしい。
TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)
2021/06/20(日)14:00
ロームシアター京都 メインホール
曲目(予定)
ラヴェル:組曲「クープランの墓」より
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ ほか
■指揮
三ツ橋敬子
■小説
藤野可織
■ストーリーテラー
川栄李奈
■管弦楽
京都市交響楽団
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