2021/5/4
取材レポ
――それぞれの役柄についてお聞かせください。
葵 私が演じるエマは、卒業パーティーのプロムに同性の恋人アリッサと行きたくてたまらないという女の子。それを許さない周りの環境があって、難しい状況に置かれているんですが、ブロードウェイから来たちょっと変わった大人の方たちと出会います。アリッサとの衝突や自分自身との葛藤もある中、自分らしさや生きるために必要なことは何かを考えて成長していきます。
岸谷 そのちょっと変わった大人のメンバーが、私や寺脇さん、大黒摩季さん、草刈民代さん、霧矢大夢さんです。我々はブロードウェイでスターだという人格形成が出来上がったおじさんたちです。セレブだと自分たちでは言っていますが、人間的に欠けた部分を持っている醜い大人なんです(笑)。しかし、エマに吸収され、醜い大人たちは清らかに浄化されていく。それが、私が演じるバリーと寺脇さんの位置ですね。
寺脇 僕はトレントを演じます。名門ジュリアード音楽院を卒業していることが気に入っていて、そればかり言うんです。舞台が大好きなんですが、一回だけヒットしたテレビドラマで有名になっちゃったもんで、どこへ行っても「あ、あのドラマに出ていた人」と言われる。空気が読めないけど、悪いやつではなく、途中で大きな役割を果たしていきます。確信を突くセリフも力むことなく言える男なので、楽しく演じています。
――本作の演出、日本版脚本を手掛ける岸谷さん、葵さんのエマはいかがですか。
岸谷 エマはレズビアンとして学校で偏見を受けている。普通なら非常に悲惨な物語になりうるんですが、彼女は芯が強くて、そこを何とかひっくり返そうとする。わかなちゃんもエマのように、一見、かわいくて小さくて大人しそうに見えるのに、カンパニーの中で一番しっかりした女優さんなんじゃないかな。主演として舞台に立つ力や精神力、芝居のうまさ、すべてにおいて本当にすごい女優さんですね。大阪では僕らが想像を絶するような大きな成長をしてくれるはずです。
――エマに対して役作りは?
葵 最初に講習会があってLGBTQについて知識を深めたんですが、私自身は何もネックになることはありませんでした。アリッサが大好きだという気持ちが核となるので、それに対して正直で純粋であればあるほどエマというキャラクターは輝く。何も意識せずにアリッサが大好き、彼女とプロムに行きたいという気持ちで演じています。
岸谷 LGBTQについて俳優やスタッフたちと何度も講習会を重ねました。皆でざっくばらんに話せる環境がすごく必要だと思います。アリッサが母親に「私はゲイになったのではなく、もともとゲイなんだ」と言うシーンがあるんですが、そのことを皆が当然知るべきです。世界で差別や偏見があれば、絶対になくすべきだと思いますし、作品が大きな役割になると思います。「プロム」は、センシティブになりうるテーマを大きな笑いと素敵な音楽やダンスで表現している。それがエンターテインメントの力だと思います。
――葵さんはアリッサを演じる三吉彩花さんと仲が良くなったそうですね。
葵 東京公演では一緒の楽屋で、一日中ずっとしゃべっているんじゃないかというくらい(笑)。その上、メイクを始める時間、発声練習に行く時間、電子レンジに行くタイミングなども全部一緒になってきました(笑)。食の好みも合いすぎていて、ニコイチってたぶん、こういうことを言うんだろうなと。
――作品の見どころを教えてください。
寺脇 芋洗坂係長(小浦一優)のダンス(笑)。
岸谷 よく動けるよね、あの大きさでね(笑)。
寺脇 細くてショーパブで活躍していた時から、彼を知っているんですよ。それ以外は、歌やダンスはもちろん、自分らしく生きるということがテーマなので、自分の生き方を一人ひとりが明るく考えられるんじゃないかなと。見た方が泣き笑いしたと言います。僕も初めて見た時、涙を流しつつ、顔は笑っていて、すごく幸せな思いにさせてくれた作品でした。楽しみにしていてください。
葵 キャラクターは皆、何かしらうまくいかないことを抱えていて、とても人間味があります。そこに見ている人が共感して、それぞれの悩みに向き合おうとするのがこの作品だと思います。解決や成長の仕方も突拍子もないものではなく、すごく地に足がついていて、共感できると思います。地に足がついているにもかかわらず、音楽や話は明るいテンポで、客席と一体となり前に向かっていこうというエネルギーが巻き起こるんです。壁を作らずすんなり届く優しさを持った作品なので、私自身も恐れることなく、この作品を真っすぐに届けたいです。ぜひ、皆さんに受け取っていただきたいです。
岸谷 我々も同じ気持ちです。僕がブロードウェイで2019年に見た時は、大きな笑いの渦に巻き込まれていったんですが、日本バージョンは、このつらい日常を送っている皆さんの特別な感情がわいて、それが涙となり笑顔となるんだと思います。地球ゴージャスはずっとオリジナル作品を作ってきて、ブロードウェイ作品は初めてですが、コロナ禍の今まさに届けたい作品になりました。万全の予防対策をした上で、お客さまに心の栄養や地球ゴージャス流の元気を与えられたらと思っています。大阪公演がもっと素晴らしい作品に進化するように毎日、挑んでいきたいです。
取材・文 米満ゆう子
■脚本
ボブ・マーティン チャド・ベゲリン
■音楽
マシュー・スクラー
■作詞
チャド・ベゲリン
■日本版脚本・訳詞・演出
岸谷五朗
■出演
葵わかな 三吉彩花
大黒摩季・草刈民代(ダブルキャスト)
霧矢大夢
佐賀龍彦(LE VELVETS)・TAKE(Skoop On Somebody)(ダブルキャスト)
藤林美沙 小浦一優(芋洗坂係長)
岸谷五朗 寺脇康文 他
2021/05/12(水)~2021/05/16(日)≪全6回≫
フェスティバルホール
※緊急事態宣言発出により、5月9日〜11日の公演は中止になりました。今後も政府・自治体からの発表により、 開催の変更の可能性があります。
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