2021/3/2
公演レポ
「おまっとさんでした!」。昭和の笑いが懐かしいミドルエイジから、一周回って「新鮮~!」なヤング世代まで。老若男女のツボに応える、劇団☆新感線41周年春興行、Yellow⚡新感線『月影花之丞大逆転』が2月26日、東京で開幕した。通常100人態勢で稼働する巨大カンパニーが、コロナ禍に発足させた新シリーズ。JR新幹線の“お医者さん”で、「見た人は幸福になる」と言われる希少な新幹線ドクターイエローにちなみ、安心・安全に配慮した少数精鋭の公演だ。
劇団月影花之丞のベテラン俳優、塾頭剛太郎(古田新太)が国際的な殺し屋“イレイザー”との情報を掴んだインターポール極東支部。長官秘書の山本山本子(山本カナコ)は早速、捜査官のモスコウィッツ北見(浜中文一)に新人劇団員に扮した潜入捜査を開始するよう命じる。劇団では本公演に向けた稽古が始まっていた。月影花之丞(木野花)の指導にも次第に熱が帯び始める頃、北見はワケありの元トップ女優・水林星美(西野七瀬)、大口契約欲しさに稽古に参加する保険外交員・東影郎(阿部サダヲ)、そして塾頭や月影本人に至るまで、劇団員らの知られざる過去を知ることに……。
SF任侠時代劇からダジャレ・ミュージカルまで、何でもござれな「劇団月影花之丞」の稽古場が舞台とあって、劇中では隙あらば荒唐無稽な劇中劇が展開する。河野まさと、村木よし子ら古参劇団員が率先して小ボケで弾みを付けると、古田新太、阿部サダヲも役の大小に関わらず貪欲にオモシロを追求する。主軸で舞台を運びつつ、さまざまな役に扮しては秒で舞台を駆け抜ける。時にはセットの転換まで行い、陰日向にと大活躍だ。加えて、電飾を使ったド派手な演出や胸のすく決め台詞もあり、新感線らしさも忘れない。小粒でもピリリと刺激的な公演となっている。
ジャニーズきってのお笑い番長、浜中文一が“おポンチシリーズ”で劇団初登場を飾るのも打ってつけだ。美しい顔とダンスの心得はそのままに、振り切った演技で場を席巻する。その勇姿から“メメメのひと”と命名される日もそう遠くはないだろう。同じく初登場の西野七瀬は元乃木坂46の絶対的エースらしく、規格外のキュートさで翻弄する。見せ場も多く健闘ぶりが光る。
そして「この人の存在に物語を書かされた!」と作家と演出家が口を揃えるインスピレーションの女神、木野花。月影花之丞としての語り口は確信と自信に満ち溢れ、その一貫したブレのなさが笑いを生み、時にオモシロを超越して胸を打つ。最後には彼女の演劇道こそが「予測不可能な時代を機嫌よく乗り切るための最善策かもしれない」とさえ思えるほど。その一言が、明日への扉を開かせる。陽気な波動を届けるために。この春、“幸せの黄色い新感線”が大阪にやってくる。
取材・文:石橋法子
撮影:田中亜紀
■作
中島かずき
■演出
いのうえひでのり
■出演
古田新太 阿部サダヲ/浜中文一 西野七瀬
河野まさと 村木よし子 山本カナコ 中谷さとみ 保坂エマ 村木仁/木野花
2021/4/14(水)~2021/5/10(月)
オリックス劇場
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