会って思いを伝えにくい今だからこそ、新曲に込めた想い

2018年に発表したアルバムの中の1曲『魔法の絨毯』が昨年8月に動画投稿アプリ｢TikTok｣で人気となり、今、熱い注目を集めているシンガーソングライター･川崎鷹也。｢最初に誰かが僕の楽曲をBGMとして使ってくれたのがきっかけなんですけど、周りの人に言われるまで曲がバズっていることも知らなかったので、実感はなかったです｣と笑って話してくれた彼に最新曲『サクラウサギ』やシンガーソングライターとしての想いなどを聞いた。

――昨年は大きな転機だったのでは？

『魔法の絨毯』が色んな方に聴いて頂けるようになって、数週間で一気に変わった感じです。音楽的にもそうでしたけど、子供が生まれたり、会社を辞めたり、本当にすごかったです(笑)

 

――注目度が上がる中、今年最初の曲に『サクラウサギ』を選んだのは？

コロナ禍で卒業式や文化祭などがなくなったっていうメッセージをたくさん頂いて。人と人とのコミュニケーションがどんどん減っているんだろうなって考えた時に、僕らの時代よりも気持ちを伝えられないことが多いんじゃないかなって思ったんですよ。それで専門１年生くらいの時に書いていたこの楽曲のことを思い出して、今年の卒業の時期に合わせてリリースしたいと思いました。これは卒業に向けた楽曲ですけど、思いを伝えられずに終わってしまう曲なんです。卒業の日、弱虫で『好き』って言えなかった女の子のことを“サクラウサギ”って付けているんですけど、反面教師というか、『私は、僕は“サクラウサギ”にならないようにしよう』って思ってもらえたら、この楽曲を形にした正解なのかなと思います。

 

――昨年10月発表のEP『Magic』はバンドサウンドでしたが今作はまたシンプルに。

『Magic』は『魔法の絨毯』が有名になる前から作っていたんですよ。『魔法の絨毯』がバズるなんて思ってないし、模索の中の一手で、8年くらい弾き語りをやり続けてきたけど『弾き語りだけじゃないぜ！』っていうのをアピールしたかったんです(笑)。僕はやりたいこと、伝えたいメッセージはシンプルなものが好きですし、聴く人によってバンドサウンドは先に音を聴いて、ノリを聴いてから歌詞を見て、ってなっていくと思うんですけど、弾き語りって唯一、ノリとメッセージを一気に伝えられるんですよ。その面白さがあるし、それが楽しくて弾き語りをやっているので、あれはイレギュラーです(笑)

 

――弾き語りはシンプルな分、歌の力が際立ちます。

歌の持つ力に関しては、すごく信じているんですよ。僕が聴いてきた音楽で一番憧れて尊敬しているのは玉置浩二さんなんです。あの方のパッションだったり、歌に対する熱、それでいて繊細なところは、やっぱり何十年かかってもかなわないなって思うし、ああいう音楽を聴いてきたので、歌声を聴いてゾクってくる感じだったり、『言葉に表せないけど、なんかいい』って思ってもらえるように、というのは意識してレコーディングしています。

 

――今後、シンガーソングライターとしてどうなっていきたいですか？

楽曲を作る上で一番大事な感謝、愛というモットーは間違いなく捨てないですし、何気ない毎日の中に見落としている幸せがあることを思い出してもらいたいなっていうのが根本にあるので、誰かの心をぐっと掴めるような楽曲を作っていく。かつ、お客さんの前で何ができるのかというのがミュージシャンの本来あるべき姿なので、落ち着いてステージに立てるようになったら、皆さんに本物を伝えられるようにしたいなと思っています。あとは『魔法の絨毯』ができた時から聴いてくれているお客さん、今まで支えてくれた皆さんに恩返ししたいなと思っています。

 

――メッセージをお願いします。

まずは見て頂いてありがとうございます。今の世の中は頑張れない、うまく笑えない時などが増えたと思うんですけど、無理にそうする必要はなくて、そんな時こそ音楽に逃げて来てほしいなって思うんです。もし、どうしようもなく悩んでいる方がいたら、僕だけじゃなく、いいミュージシャンはたくさんいるので、音楽を聴いて、また明日から少しでも頑張ろうと思ってもらえたらいいなと思います。

 

TEXT：金子裕希

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