2021/2/19
公演レポ
「人生楽に生きようよ 最後は笑ったもんがち♪」と山田孝之演じるアーサー王が能天気に歌う。そう、本当にこのご時世、最高にバカバカしくてシュールでナンセンスな舞台で笑った者が勝ちかもしれない。その山田を主演に、賀来賢人や小関裕太、新妻聖子ら豪華キャストが集結したミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT featuring SPAM ®』の大阪公演が2月18日、オリックス劇場で幕を開けた。同作はイギリスが誇るコメディグループのモンティ・パイソンが制作した映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1975年)をベースにしたミュージカルだ。日本のコメディ界で快進撃の演出・上演台本の福田雄一が「一番好きで大切な作品」だという。モンティ・パイソンという器に、福田流の笑いがてんこ盛りに盛られ、キャストという具材が、器から飛び出さんばかりに弾けてくれた。
かの有名な中世の物語「アーサー王と円卓の騎士」をモチーフに、ひたすらシュールで脱力系の笑いで描いたのが映画なら、ミュージカル版はモンティ・パイソンのメンバーのエリック・アイドルが脚本・詞を手掛け、有名ミュージカルのパロディなどを取り入れたブロードウェイらしい華々しさが加わっている。舞台版は2005年にブロードウェイでオープンし、最優秀ミュージカル賞を含むトニー賞を3部門で獲得。日本では、2012年、2015年に福田の手によりユースケ・サンタマリアのアーサー王で上演されたが、今回、初演に参加していた賀来以外はすべてキャストを一新。福田が山田と組んだ『勇者ヨシヒコ』シリーズはこの映画を元ネタに作ったドラマだというから、新たなアーサー王に山田が選ばれたのもうなずける。
舞台は中世のイングランド。神のお告げを受けたアーサー王(山田)は、湖の貴婦人(新妻)から聖剣を授かり、従者パッツイ(矢本悠馬)や家来となるランスロット(賀来)、ロビン(小関)らを連れて、聖杯を探す旅に出る。奇想天外でバカバカしいハプニングが次々と起こる中、彼らは無事、聖杯を見つけることができるのか…?
山田は威厳がありながらも、言っていることが真面目過ぎて笑いを取るアーサー王を好演。福田は取材で、役者に求めるコメディのセンスは「ふざけたことをふざけて言うのではなく、めっちゃ面白いことを真剣に言える選択ができること。それが山田君は絶妙」だと言っていたが、今作でもその山田のセンスの良さに舌を巻いてしまう。堂々のコメディ王ぶりを見せてくれた。
また賀来は、ランスロット卿以外にも、「ニッ」という言葉を連発する騎士、妖術師吉田など何役もこなし、八面六臂の活躍で観客の笑いを取る。特に、ディスコやサンバ調の楽曲『彼の名はランスロット』のダンスはふき出さずにはいられない。小関は、癖のあるロビン卿役で、そのイケメンでさわやかなイメージを気持ちよく裏切る。映画『メリー・ポピンズ』に憧れてタップを始め、この世界に入ったという、その軽やかなタップダンスの上手さも目を引いた。そして、純粋なコメディは初めてだという新妻は、圧倒的な歌唱力と自虐ネタで観客を大いにわかせた。アーサー王とスキャットを繰り広げる楽曲『円卓の騎士』では、「山田ぁ♪」と名前までスキャットしいつまでも聴いていたい。コメディエンヌとしても太鼓判を押せる。
ブロードウェイではお決まりの毒々しい人種ネタなどは、福田の腕で、マイルドで分かりやすい時事ネタや地元ネタ(ここでは大阪ネタ)に置き換えられ、モンティ・パイソンを知らない若い世代や、ミュージカルが初体験の観客にも入りやすいように作られている。そんなネタはアドリブで日々変わるのが福田流なのでリピートして楽しみたい。
冒頭にも書いたアーサー王やキャストが歌う楽曲『人生楽に生きようよ』に心は和み、最後までやさしく励まされる。原題は『Always Look On The Bright Side Of Life(いつも人生の明るい面を見よう)』といい、2012年のロンドンオリンピックでは老年のエリック・アイドル自らが歌って世界中を盛り上げた。その模様やモンティ・パイソンの作品の数々は映像で見られるので、これを機に、ぜひ、笑いの旅を探求してみてほしい。
取材・文 米満ゆう子
写真 ©ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」 製作委員会
ミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT』featuring SPAM®
■出演
山田孝之/賀来賢人/小関裕太 三浦宏規/矢本悠馬/じろう(シソンヌ) 長谷川忍(シソンヌ)/新妻聖子 他
■脚本・詞
エリック・アイドル
■音楽
ジョン・ドゥ・プレ&エリック・アイドル
■原作
映画『Monty Python and the Holy Grail』より
■上演台本・演出
福田雄一
日時:2021/02/18(木)~2021/02/23(火祝)≪全8回≫
会場:オリックス劇場
公演詳細はこちら
・入場前には大阪コロナ追跡システムの登録を推奨
・足元、手足の消毒
・入場前に検温を実施
・待機列では一定の距離を確保
・スタッフとの接触をなくすため電子システムを用いたチケットもぎり
・終演後はロビー内の混雑を避けるためブロックごとの規制退場