2021/1/29
取材レポ
100人以上が稼働する通常公演に代わる新作を急遽、制作することになった中島といのうえ。木野花が出演するなら、過去に彼女が演じた爆発的キャラクター「月影花之丞」を主役に据えた新作しかないと即決だったと話す。
中島 そもそも劇団員の高田聖子から木野さんはこんなに面白い演出をするんだよというのを聞いて、ゲラゲラ笑いながら「それはいつか芝居にしたいね」と書いたのが『花の紅天狗』なので。今回も書いていて非常に楽しかった。2時間あっという間に終わる芝居だと思うので、楽しんでいただければ。
いのうえ 本当に『花の紅天狗』から18年経ったのかというくらい、木野さんも全く変わらないので。面白い芝居になるのではと期待しております。
古田 いま稽古中ですが、まだ何が面白いのか分からない(笑)。“木野先生”がまったく段取りが覚えられないので混沌とした稽古場を見せるのが一番面白いんじゃないかな。「じぃじ」という言うところを勝手に「ばぁば」に変えたり。オイラたちを楽しませようとしているの?
阿部 あれが一番面白かったな、木野さんがテンパってらっしゃるときに、たまたま近くを救急車が通って、古田さんが「お迎えが来たよ」と言ったのが(笑)。
木野 みんなを楽しませようとか、そんな余裕はないのよ!正直、初演と再演でやり残した感がすごくあったので、今回はリベンジのつもりで臨んでいるんですけど全然。まるで初演のように、段取りがものにならない。
物語の舞台は月影花之丞(木野花)が主宰する劇団の稽古場。ベテラン俳優の塾頭剛太郎(古田新太)が実は世界的な殺し屋との情報を掴んだ、インターポール捜査官のモスコウィッツ北見(浜中文一)は、新人劇団員を装い潜入捜査を開始する。阿部サダヲは大口契約欲しさに稽古に参加する保険外交員、本作が初舞台の西野七瀬は、共にクセのある劇団員として登場する。
阿部 この時期に笑いに特化した舞台に出演できるのは嬉しいですね。
浜中 僕は個人的に昔見ていたドラマ『木更津キャッツアイ』で印象的だった古田さん、阿部さんと舞台をやらせてもらえるのは嬉しいこと。新感線の稽古は「動くからキツイ」と事前に色んな人から聞いていたんですけど、思っていたより立ち廻りもなく、楽しくやらせてもらってます。逆に古田さん、阿部さんの方が動いてらっしゃって、申し訳ない気持ちです。
いのうえ 浜中くんは、リーダー(河原正彦)が演出したミュージカル『50Shades!』で演じた清潔感のあるお金持ちの変態役が驚くほど素晴らしくて、すごくハマってた。かと思えば、新派とか他にも色んな芝居をやっていて、観るたびに印象が変わる。これは演技スキルが高いのではないかと。今回は古田や阿部さんの間で翻弄される役。今まで彼がやったことないような役なのでそこも楽しみだし、やれるんじゃないかと。
浜中 面白くできるように頑張ります!
西野 私は舞台の稽古すらどういうものかが分からなくて未知の世界だったんですけど、「居心地のいい場所だな」って昨日の稽古ぐらいから楽しめるようになりました(笑)。
古田 ちょうど昨日は劇団員みんなで動くモブシーンの稽古だったので。そこで七瀬ちゃんがすごく楽しそうにしているのを見て「良いことだな」と思ってました(笑)。
西野 すごく楽しかったです。ひとりで台詞を言う場面では「もし本番で頭が真っ白になったらどうすればいいんだろう」とか不安要素はありますが、頼れる先輩方ばかりなので、すごく安心感があります。末っ子的ポジションとしてさらに馴染んで、楽しめていけたらいいなと思います。
木野 この作品は歌も踊りもあって、ほぼ全編笑いという喜劇なんですけど。でもね、最終的に演劇への愛や劇団の力というのがドーンと立ち上がってくる。時々自分の台詞を言いながら「深いなこれ」と思ったり。それこそ花之丞が言う「命がけ」でこのバカバカしい芝居を本気出してやったら、相当いい芝居になるのではないかと。問題は私がどれだけ段取りをものにできるかだと思うので、いま必至で稽古しています!
いのうえ 何よりも月影が演劇の神様に愛されたキャラクターだと思うので。チャレンジの劇団公演にはなりますが、そういう祈りのような思いも含めて成功させたい。
古田 本当にくだらないことを皆で一生懸命考えております。コロナ禍ではありますが「こんなにがっかりすることがあるんだ~」っていうのを楽しみに、観に来てください(笑)。よろしくお願いします!
TEXT:石橋法子
PHOTO:田中亜紀
■作
中島かずき
■演出
いのうえひでのり
■出演
古田新太 阿部サダヲ/浜中文一 西野七瀬
河野まさと 村木よし子 山本カナコ 中谷さとみ 保坂エマ 村木仁/木野花
2021/4/14(水)~2021/5/10(月)
オリックス劇場
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