2020/11/30
インタビュー
――住友生命いずみホールは、手鍵盤が4段、足鍵盤が1段、3623本もの専用パイプが組み込まれたパイプオルガンを備えていますが、先ほどのリハーサルで身体を包み込むような音色を堪能しました。
このホールで10年ほど前に弾いたことがあるのですが、やはり本番までにオルガンと仲良くならなければいけないので(笑)、どんな楽器だったかなと思い出しながら弾いていました。パイプオルガンは1台1台違っているので、どの鍵盤で演奏すればこの音が出るなど楽器の癖をつかみ、判断力を研ぎ澄ますということを年々重ねています。
――とても奥の深い楽器ですが、オルガニストとして歩まれたきっかけは?
幼い頃からピアノとハモンドオルガンを弾いていたのですが、東京の大学に通っていたとき、たまたま出かけたパイプオルガンコンサートで感動してしまって。私の出身・鹿児島ではあんな大きなパイプオルガンを見たことがなく、どうしても弾いてみたくなって先生を探し、ぼちぼち勉強を始めました。
――早稲田大学政治経済学部を卒業され、その後東京芸術大学音楽学部別科オルガン専修を経て、同大学の大学院に進まれたという経歴に驚きました。
早稲田大学を出てからも楽器メーカーに絡んだ音楽の仕事はしていたのですが、やはり音大で専門的に勉強していないことがすごく気になって、今なら自分で学費を払えると思って東京芸術大学へ入り、そこから5年パイプオルガンの勉強をしました。最初、別科の2年で済むと思っていたけれど甘かったですね。もっと勉強しなければ無理と。でもそこで学んだからこそオルガンの奥深さ、面白さがわかりました。パイプオルガンの魅力は、まず見た目ですよね。ステージ全面を覆う、この体積は何!?という(笑)。これを一人で弾くというのがまた面白いところで、そこに取りつかれた演奏家は多いと思います。
――今回のコンサートでは、クリスマスにお馴染みの曲やバッハの曲がまず並んでいます。
クリスマスキャロルや『天使の糧』などはこの時期によく聴かれる曲です。そしてオルガンコンサートといえばやはりバッハで、『トッカータとフーガ ニ短調』は、子どもさんが口ずさむぐらい有名ですが、通して聴くととてもドラマティックですよ。
――ドラマ『エール』の主人公のモデルとなった作曲家、古関裕而さんの『六甲おろし』も披露されるのですね!
大阪で古関さんの曲と言えばこれしかない!と。ほかにも『エール』の中で薬師丸ひろ子さんが歌われた讃美歌『うるわしの白百合』も演奏します。
――戦争で焼失してしまった自宅跡で凛と歌われる感動的な曲ですね。『エール』は音楽がテーマの一つでしたが、この作品に今年携わられたのは大きな出来事でしたか?
そうですね、今の苦しい世の中を抜け出すまでの間、音楽が皆さまの役に立つことがあるのではないかと改めて感じました。ドラマは時代が大正、昭和と移っていくのですが、当時はピアノではなくオルガンが学校の教室にあり、小学校の教師役をなさっていた森山直太朗さんにまず指導をさせていただきました。彼は鍵盤楽器の経験はほとんどなかったのですがギターを弾ける方で、本番までにきっちり形にしていらっしゃる。プロの方の底力を目の当たりにしました。
――山口さんは普段から、クラシックだけではなく米津玄師さんの曲など幅広い曲を弾かれていますね。
もともとハモンドオルガンというのが戦後、ジャズやポピュラー、ゴスペルなどの世界で使われていた楽器で、私自身そちらのオルガンの印象が強く、クラシック以外の演奏を依頼されることも多いです。今回のプログラムも、パイプオルガンを聴いたことがない方まで気軽に楽しんでいただければとの思いがあります。元気の出る曲が多いですので、前向きな気分で帰っていただければ嬉しいです。
TEXT:小野寺亜紀
★ INFORMATION
クリスマス・オルガンコンサート
■出演
オルガン:山口綾規
ソプラノ:コロンえりか
2020/12/19(土)12:00/16:00
住友生命いずみホール
≪ホテルニューオータニ大阪タイアップ企画≫
クリスマスケーキプラン、アフタヌーンティーセットプランの販売が決定!
各公演30名様限定、クリスマスの特別なひとときをお得に楽しんでいただけるプランです。
>>詳細はこちら