2020/11/19
取材レポ
――東京や札幌でもすでに上演され、手ごたえを感じていますか。
生瀬 去年の夏に今回の企画を始めたんですが、今年の2月ぐらいからコロナウイルス感染拡大の影響で雲行きが怪しくなって、もうできないなと思っていた。宮藤(官九郎)君も「これやるのかなぁ」と。彼はやらないかもしんないから筆が走ったと言っていました(笑)。野球でいうと、思いっきり振った感じの台本になりましたね。役者やスタッフ全員がPCR検査を受けて、劇場のお客さんに影響を出さないように十分に心がけてやっています。本当に今、やれて良かったという心境です。
山本 私は笑うところなど毎回お客さんの反応が違うので、発見があって面白いです。
生瀬 僕は改めてお客さんに乗せられたいという気持ちがあって。声を出して、表現して、舞台人はお客さんがいて初めて生きていけるんだと痛切に感じました。お客さんが少ない日があるんですが、「私はこれ好きですよ」と皆、表現してくれる。人数が多いから拍手の量が多いんではないんですよ。少なくても本当に気持ちが伝わってくる。
山本 少なくても立ち上がってくれる人がいますもんね。
生瀬 最後にスタンディングオベーションしてくれる人がいると、泣きそうになりますね。
――今回、共演者の方々の印象は?
山本 とても自由な人たちですね(笑)。
生瀬 正直に言ったほうがいい、記事にしやすいから、悪口を言ったほうがいい(笑)。
山本 生瀬さんは独特の雰囲気をお持ちです。たまに話している内容が分かんないです(笑)。
生瀬 どういうことよ。
山本 そこで盛り上がるのかと思うところで盛り上がったりする。(池田)成志さんは自分の世界を持っていて、一番熱い方ですね。熱いけど、子どもっぽいところもあってお茶目。古田さんは意外に(笑)、真面目ですね。
生瀬 そう、芝居に対してものすごく真面目なのは古田。
山本 もっとファンキーなイメージがあったんですが、一番デリカシーがある方。
生瀬 俺はデリカシーがないの?(笑)。
山本 いえいえ。古田さんはちょっと女性的な部分があって、女の人への接し方が上手です。
生瀬 いいね、だからモテんだね、あいつ。
――日本を舞台に、独身男性が次々と殺され、被害者は全員、苗田松子と名乗る女性と関係を持っていたという物語です。お二人の役柄は?
生瀬 僕は売れない俳優の役で、事件を再現する時に演じるという役どころです。還暦が近いねずみの三銃士と、こんな綺麗な山本さんと、腕はもう日本で一番じゃないかと思う池谷のぶえさんを迎えてやっていますので、たくさんの人に見ていただきたいですね。
山本 今回は出演者が一人で何役もするんですが、私が軸でやっているのは、宮藤さん演じるドキュメンタリー作家の奥さんで元アイドルです。松子に翻弄されて、女としても魅了されてしまう。ねずみの三銃士も魅了されるんですが。初めて舞台を見る方にも楽しんでいただけると思います。
生瀬 本当に敷居が低いよね!下品です(一同笑)。
山本 楽しくて、見た後に色々と考えさせられる。持ち帰るものが多い作品だと思います。
――松子は、首都圏連続不審死事件で死刑判決が確定した木嶋佳苗死刑囚がモデルだそうですね。作品を通して木嶋さんは何がそんなに魅力だと思いますか。
生瀬 どうしてその人に惹かれるのかが分かる人と、分からない人がいると思いますね。また、舞台で描くようにその女性に惹かれる人の人生もあると思うんですよ。
――生瀬さんから見て、木嶋さんはどうですか。
生瀬 何とも思わない(笑)。だけど、僕、珊瑚を飼っているんですよ。珊瑚って皆さん、興味ないですよね?(一同笑)。それと同じで魅力に取りつかれるのは理由じゃないんでしょうね。
山本 私も生瀬さんがおっしゃる通り、惹かれる人の環境だと思います。私の役も元アイドルだったからこそ、松子に惹かれたんだと思います。木嶋さん自身は文才があって、字がきれいな方だと思いました。
生瀬 すごいですよね。
――山本さんは今作で二度目の舞台ですが、いかがですか。
山本 今回は皆、世代が上なので、しっかりしなきゃと追い込まれて、何回も逃げたくなりました(笑)。
生瀬 そうなんだ!
山本 先輩方は厳しくないし、演出の河原さんもやさしく教えてくださるんですけど、どう表現していいか分からない自分が嫌で。
生瀬 もう40回ぐらい公演しましたが、彼女は伸びしろしかないんですよね。初日から、まぁ、変わりましたね。僕らも伸びたいけど、そんなに変わらないと思うんです(笑)。彼女はお客さんの前でドンドン自由になって、うらやましい限りですよ。今後ももっと舞台に出ていただいて、素敵な舞台女優になってほしいですね。
山本 稽古の時は嫌でしたが(笑)、コロナ禍で再開したお仕事が人を感じられる劇場で、また舞台に出たいと思えるようになったのが良かったです。
――今作では脚本を書いた宮藤さんが初出演なのも注目ですね。
生瀬 とてもスムーズにいきましたが、稽古場では僕らからの質問に答えていいものか、演出家がいるので困ったみたいです(笑)。役者は作家がどう思っているのか聞きたいから、現場では三者面談みたいになりました(笑)。それに現場でセリフを変えるのがとにかく早かったですね。
山本 本当に頭がいい方ですよね。稽古中、すごく考えながらやっていらっしゃるから、ほかの人がセリフをしゃべっている時に宮藤さんの口が一緒に動いていたりするんです(笑)。
――最後にメッセージをお願いします。
生瀬 「久しぶりに笑えた。コロナ禍の暗い世相を2時間半忘れられた」と言われました。万全の対策で、皆さんをそんな世界に誘います。
山本 少しでも皆さんの気持ちを明るくできれば。たくさん笑わせますので、マスクの替えを持って、会いに来てください。
取材・文 米満ゆう子
11/19(木) 19:00
11/20(金) 19:00
11/21(土) 13:00/18:00
11/22(日) 13:00
11/23(月・祝) 13:00
会場:ロームシアター京都メインホール
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