2020/10/20
インタビュー
「基本的に今までのマジックショーは観るだけものだったんですが、僕はマジックショーは『観る時代』から『感じる時代』に変わった、と言っています。今回のショーでは劇場に来てくださった方の手の中で奇跡が起こるんです。お子さまからご年配の方まで、奇跡の瞬間を体感できるショーになっているというのが、今回のミラクルですね。今までは、お客さんをステージ上に呼んだり、僕が客席に降りたりして、インタラクティブなこともできたんですけど、そういうことができなくなってしまいました。今回は、僕の携帯番号を会場のみなさんにお教えして、一番最初に繋がった方にマジックをする、というような試みもあります。考えられる限り、どうやったら離れていても繋がれるか、というのをずっと考えていて、それを凝縮させたショーになっています」
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年1月から開催を予定していた自身初のジャパンツアーが中止。ソーシャルディスタンスなど、ショーにもニューノーマルが求められる中で、新しいマジックを誕生させた。
「スケジュールが真っ白になってどうしようか、っていう状況だったんですけど、逆にこれを5年後10年後にネタにできたらいいな、と。この中で、どうやったら今しかできない新しい奇跡を表現できるかな、と考えました。ステイホーム中の研究は、見せる場もないからリアクションも無くて…ウケるか、大スベリするかの2択かな、と思っていたんです(笑)。自粛が明けて、人にお見せできるようになったら、観た人が思っていた以上に感動してくださって。僕の手が触れていない中で奇跡が起こることに、想像以上のリアクションを貰えているので、ステージで披露するのがすごく楽しみ」
難しい状況下であったことは想像に難くないが、彼の言葉にはポジティブさも感じられる。マジックを生み出すインスピレーションはどのように湧いてくるものなのだろうか。
「僕の精神年齢って、多分4歳とか5歳(笑)。やっぱり、大人になると既成概念ができて、あれができない、これができないってなるじゃないですか。何かと理由をつけて挑戦しなくなっちゃう。僕は、もし魔法が使えたらこんなことができたらいいな、みたいな空想もよくします。限界を作らずに伝説を作れ、が座右の銘なので(笑)。昔から僕はおもちゃ屋さんが好きで、おもちゃ屋さんってインスピレーションが刺激されるんですよ。海外に行ったときとか、まずその街のおもちゃ屋さんを探して行きます。子どもの心をいつも忘れないようにしていますね」
子どもの心から生まれたマジックの数々。彼のステージは、その度に新鮮な驚きがあり、コロナウイルスのことがなくとも、常に新たな挑戦があるように思える。
「18歳でラスベガスでチャンピオンになった時は、変えること、変化することが怖かった。どこに行ってもチャンピオンのHARAさんですって紹介していただいて、そのプレッシャーが苦しくて。。今は自分がどうやったら楽しくなるかな、と考えて、どんどんショーも変えていくようになりました。でも、『挑戦する』って考え方は、ストレスたまりますよね(笑)。こういう取材の場でも『挑戦されていますね』って言っていただけることが多いんですけど、僕自身は挑戦しているっていう感じじゃない。その日その日の自分と、お客さんが“今日”をどうやったらより楽しんでもらえるかな、という考え方なんです。今が一番、楽しんでマジックに向き合えるようになっています。本当に楽しんでやれた時に、新しいものが生まれる気がします」
挑戦ではなく、アップデートしていく楽しさを追求し続けているというHARA。ステージへの想いは、ある出来事をきっかけにさらに加速している。
「先日、娘が生まれまして、すごく自分の考え方が変わりました。自分のショーに娘が来てくれて、子どもにも楽しめるショーにしたいという気持ちが、以前よりももっと強くなりました。本当に世界が変わりました。新しい目線ができたというか。観た人が、子どもに見せたいな、孫に見せたいなと思ってもらえる、そして、もう一度見たいな、と思ってもらえるショーにしたい。何度でも楽しめるショーにしたいと思いながら稽古しています。モチベーションがすごく変わりましたね。0歳児なので、まだわからないとは思うんですけど(笑)」
何度でも楽しめるショーを、と気持ちも新たにリハーサルに励む彼は、イリュージョンの魅力をこう語る。
「自分が舞台に立っていていつも思うのは、自分が一番特等席にいるな、っていうこと。僕だけが、みなさん全員の顔を見ることができるんです。最初は腕組みなんかしながら、どうなってるの?と怪訝な顔をしながら観てる方が多いんですが、だんだんショーが盛り上がっていくと、いつの間にか腕組みがほどけて、最後には無邪気に手を挙げて楽しんでくださる。普通に生きてると、ストレスも責任もあって、どんどん顔が険しくなりますよね。そんな大人の険しい顔が、マジックを見て5歳児に戻っていて、それが一番のイリュージョンだといつも思います。子どもの頃って、何でもできる気になれたじゃないですか。でも、本当は大人になった今も、なんでもできる。僕のショーは、自分の夢や希望を叶えられるよ、っていう子どもの時の気持ちに戻すことができると思っています。イリュージョンの一番の魅力は、大人を子どもに変えてしまうことなんです」
子どもは無邪気な心のままに、大人はあの日の無邪気さを取り戻せる――心が疲弊しがちな現代に、HARAの体感型のマジックは心地よい刺激を与えてくれるはすだ。
「こういう試みのショーは世界初なので、世界初を皆さんの目と体を通して、ミラクルを体感していただきたい。体感型マジックで自分の体を通してミラクルを体感すると、頭が真っ白になって、頭の中にあったモヤモヤや悩みが吹き飛ぶんです。奇跡を体感してもらえたら、頭がクリアになる。その状態で、温かな気持ちになって帰ってもらえたらと思っています」
TEXT:宮崎新之
★ INFORMATION
HARA”新感覚” Magic Show2020 ~Miracle~
2020/10/25(日)13:00
大阪国際会議場 メインホール
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