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『獣道一直線!!!』東京公演レポート

2020/10/14

公演レポ

『獣道一直線!!!』

「殿方を骨抜きにする、天賦の才がある」とうそぶく女は、天使か悪魔か―――。生瀬勝久、池田成志、古田新太。言わずと知れた演劇界の“獣珍(じゅうちん)”トリオが「今一番やりたい芝居」に注力する演劇ユニット「ねずみの三銃士」。6年ぶり4回目となる最新公演『獣道一直線!!!』が10月6日、東京で開幕した。脚本・宮藤官九郎、演出・河原正彦の最強タッグはそのままに、池谷のぶえ、山本美月を両ヒロインに迎えめくるめく虚構の世界へと誘う。ワハハと腹がよじれる笑いから、上げた口角をヒクヒク歪ませるいやぁ~な笑いまで。三銃士特有のオモシロ怖い世界は本作でも健在でチュウ。

物語は3件の殺人事件に始まる。SNS上では疑惑の人物の名前が拡散された――苗田松子(池谷のぶえ)。3人の被害者が加入する保険金の受取人だった女だ。ドキュメンタリー作家の関武行(宮藤官九郎)は真相を探るべく身重の妻・かなえ(山本美月)を置いて、ひとり苗田が暮らす福島へ向かう。そこで知り合った3人の俳優、生汗勝々(生瀬勝久)、池手成芯(池田成志)、古新田太(古田新太)と、事件の再現VTRを制作することに。

 

今作は、古田が宮藤に手渡した、一冊の書籍「毒婦。木嶋香苗100日裁判傍聴記」が発端。“毒婦”を題材に、自我の欲望に絡めとられる人間の悲喜こもごもを全編コメディタッチで描く、鬼気&嬉々迫る群像劇だ。物語は重層的で、現実や事件の回想劇、婚活サイトなどの仮想世界がテンポよく入り乱れる。それぞれの場面や思惑が重なり合う中、次第に何が真実で何か正解なのか分からなくなる。挙句、幸せの何たるかにまで思いを巡らせることになるとは。冒頭の爆笑コントからは想像もできない境地だ。

脚本は縦横無尽で圧倒的。演出も負けず劣らず、都市伝説からパロディまでオプションは「全部乗せ!」のカラフルさだ。それらすべてに応える俳優陣が頼もしい。シリーズ初出演の宮藤は愚直に舞台を回し、三銃士は率先して性別や年齢の垣根を超えて、数多の人物を演じ分ける。とりわけ、疑惑のヒロインに扮する池谷のぶえの存在感が際立つ。てらてらと聖女にも悪女にも映る微笑をたたえ、鼓膜に響く声色は魔性そのもの。熟れたダイナマイトボディをひけらかし、観るものすべてを翻弄する。同じく、山本美月も純然たるヒロイン像に留まらない。等身大の輝きと思わぬ威勢の良さで、新境地を開拓した。

 

体感的には、総勢30名でお届けする本格ワンフレーズ・ミュージカル・ラブコメディー・サスペンス・ホラー・アイドル歌謡ショーというような、かつてない感触と充足感を抱かせた6人。言い換えればそれは、彼らなりの愛。演劇への愛、愛、愛、愛!!! が目いっぱい詰まったステージだ。感情の赴くままに、愛の三三七拍子を打ち鳴らす。「NO 三銃士,NO LIFE」。紳士淑女の皆さま、お待たせしました! アラ還世代の重鎮トリオと愉快な仲間たちがリモート疲れを吹き飛ばす、切れ味ビターな舞台をお届けしまチュウよ。



取材・文:石橋法子
撮影:細野晋司


PARCO劇場オープニング・シリーズ "ねずみの三銃士" 第4回企画公演
『獣道一直線!!!』
 

【作】宮藤官九郎
【演出】河原雅彦
【出演】生瀬勝久 池田成志 古田新太
    山本美月 池谷のぶえ 宮藤官九郎




京都公演情報

2020/11/19(木)19:00
2020/11/20(金)19:00
2020/11/21(土)13:00/18:00
2020/11/22(日)13:00
2020/11/23(月・祝)13:00

会場:ロームシアター京都 メインホール

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