2020/3/20
取材レポ
――「ウーマンリブシリーズ」が久々の復活です。
宮藤「忙しくなって5年もあいてしまいました。大河ドラマ『いだてん』を終えて、自分でも舞台をやりたくなるだろうと思っていたんです。まさに今、書いていて、やっぱりアウトプットの仕方が大河とは違うので、すごく新鮮で懐かしい。ウーマンリブは基本的に休憩を入れず、2時間前後の上演時間でやって来ましたが、今回は転換もなくノンストップなので、その場で初めて会った人たちの中でどれだけドラマが動かせるかがチャレンジです。大河みたいに50年に及ぶ人の人生に対し、たった2時間で、どれぐらいの人間の関わりが描けるのかやってみたい。街角でスマホを出して『Pokémon GO』みたいなゲームをしている人たちが、ある時間を共有することで物語が動き出す。大河とは対極にある世界ですね」
――今回は柄本佑さんと要潤さんが客演されますが、おふたりの役どころは?
宮藤「二人はお笑いコンビで活動しているんですけど、ネタ合わせしている最中にケンカになり、互いに我慢していたものが爆発して、解散することになる。その場に居合わせたデリヘル嬢や店長、浮気妻と間男らの物語も同時に進行する。皆、非常にストレスを抱えていて、2人にちょっかいを出して、関わったり、関わらなかったりする、みたいな展開です」
――5年前より生きにくい社会になってしまったとおっしゃっていますが、具体的には。
宮藤「まず消費税。店で食べるか持って帰るか決めなきゃいけない(笑)。ファミレスの24時間営業がなくなったり。便利なツールとして持ち歩いているスマホが、イジメや自殺の原因になったりする。そんな歪んだ世の中の気分を劇で感じてもらえればと思います。要さんと佑くんが演じる芸人さんは売れないのは相方のせいだと思いながらやってきて、怒りが爆発しちゃう。ネタを書いたり、考えたりするのが佑くんの役で、何も考えていないのが要さんの役。佑くんの役が僕に一番近いんです。自分も何年か前まで、好きで始めたのに、いつの間にか何で俺ばっかりネタを考えなきゃいけないのと思い始めたりして(笑)。何のせいだっけ? ということを思い出させる芝居になればいい。何のせいだっけ? というのは、僕も含めて皆さん、わりと適応していっちゃうじゃないですか。何で携帯の充電が切れただけでこんなに絶望的な気分になるのか。持っているからだと気が付けばいい。そういう気づきがあれば、多少、ストレスは解消されるのかなと。そんな大それたことではないんですが」
――SNSをされないそうですが、ストレスになるからですか。
宮藤「そうですね。LINEだけは芝居が終わるとグループLINEがきて、情報交換するために強制的にやらされますが(笑)、基本的にはやらないですね。YouTubeは見ます」
――今、YouTubeに世界中の演劇がアップされていて便利ですが、お客さんが劇場に足を運ばなくなるという懸念はないですか。
宮藤「演劇は生で見ないと。大人計画のオーディションも、YouTubeで見ましたと言って来る人が多いんです。僕からすると、それは見たことにはならない。劇場に足を運んで、開演とともに客席が暗くなって、そこに役者がいるから演劇。映画も映画館で見ないと見たことにはならないと思っています。だからこそ生のありがたみが出るといいですよね。最近の演劇は上演時間が長かったり、チケットも1万円以上する公演が多いから…。『ウーマンリブ』は2時間以内でチケットも決して高くはない。もっと劇場に来てほしいという表れなんです。特に若者。今回、ヤング券(※22歳以下、チケットぴあのみ扱い)を設けているのは、僕は20代のころ、下北沢で安いお芝居を見て、それで人生が変わったので。そういう場が若い人にもあればいい。映像もいいけど、役者の本当の面白さを舞台で見てもらいたいですね」
TEXT:米満ゆう子
ウーマンリブvol.14「もうがまんできない」
■作・演出
宮藤官九郎
■出演
阿部サダヲ、柄本 佑、宮崎吐夢、荒川良々、平岩 紙、少路勇介、中井千聖、宮藤官九郎、要 潤、松尾スズキ
日時:2020/5/9(土)~2020/5/21(木)
会場:サンケイホールブリーゼ
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