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【取材会レポート】尾上右近 舞台「この声をきみに~もう一つの物語~」

2020/2/19

取材レポ

舞台「この声をきみに~もう一つの物語~」

尾上右近が現代劇2度目の主演
「不器用でぶっきらぼうな青年役」

古典からスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』のルフィ役までこなし、2018年には七代目清元栄寿太夫を襲名。最近はテレビのバラエティ番組で親しみやすい人柄も披露している、今注目の歌舞伎役者・尾上右近。本作にて2度目の現代劇主演を務めることになり、大阪の取材会で作品への意気込みから役者としての想いまで、熱く語った。


2017年に竹野内豊主演で放送されたNHKドラマ10『この声をきみに』。 NHK連続テレビ小説『あさが来た』などの脚本家・大森美香が、朗読教室での様々な人々の交わりを描いた人気ドラマの世界が、スピンオフのオリジナル舞台となって登場する。

「『もう一つの物語』というサブタイトルの通り、ドラマ版とは違った新しいストーリーを大森さんが書き下ろしてくださいました。僕が演じるのは入社6年目の会社員で、人づきあいが苦手で、不器用な青年。朗読教室に通うことで人と打ち解ける姿や、佐津川愛美さんが演じられる朗読の先生との恋愛も描かれた、多面性のあるほっこりとしたラブストーリーです。大森さんが僕の雰囲気などから拾い上げてくださり、当て書きいただいている部分もあるとお伺いしているので楽しみにチャレンジしたいです」。

さらに、役について「僕も不器用で、そんな自分を隠しているタイプ」と、共通点を笑顔で打ち明ける。SNSなどが盛んな時代に、「実際に人と人とが関わる朗読教室を通じてつながっていく、心の交流を描いた温かい作品です。僕もまだまだ交流の仕方を克服したいですし、日頃からコミュニケーションの重要性を感じているので、その部分を、役を通して伝えられたら」と、前のめりの姿勢で取り組む。

2017年には、男女が書簡を交わす人気朗読劇『ラヴ・レターズ』に出演し、「手紙を読み上げることでその人の気持ちを、文字を通じて感受し、それを聞く人が同じように感受する“感受の共感”が生まれるのが、朗読の楽しさだと思った」と振り返る。実際に朗読教室があれば、「行ってみたい!」とも。「景色が見えるような読み方とか、きっとあると思います。そういうことを教えていただける機会があればいいですよね」。 

現代劇は『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』に続き2作目。前回、歌舞伎と様々な違いがあるからこそ、発見も多かった。

「白塗りをして、衣裳や鬘を身に着けるなかで役になり、それらが舞台では身にまとう鎧のような感覚になるのが歌舞伎。現代劇では限りなく素顔に近い状態で出るので、精神的に裸のようで戸惑いました(笑)。様式的に歌うように台詞を話す歌舞伎と違い、自分の気持ちから出てくる言葉として台詞を言う難しさもありましたが、本来の役者としての台詞の役割を考え直す機会になりました。その喜びを今回の舞台にもつなげていきたいです」と頼もしい。 

昨年は新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』に出演、今年は四月大歌舞伎『晒三番叟』、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』への出演が決定と、古典を大切にしつつ新たなジャンルへの快進撃が止まらない。

「『歌舞伎役者は何でもやる必要はないけれど、何でもできなければいけない』、という大先輩の言葉があります。僕は循環することが重要だと思っていて、最近は“楽しく時間を過ごす”ことを一番大事にしています。そのためにいろんなことに触れ、出会い、感じることを大事にしたい。今回も各ジャンルで活躍なさっている方たちと共演させていただきます。主役ではありますが、現代劇に呼んでいただいているという感覚なので、皆さんをリスペクトし、いろんなものを吸収させていただけたら嬉しいです」。

取材中、よどみなく自分の想いを語った尾上右近。芸談を読むのが好きという一面からも、勉強熱心なところがうかがえる彼の、新たな挑戦に期待を!

 

取材・文:小野寺亜紀

★INFORMATION

舞台「この声をきみに~もう一つの物語~」

2020/03/06(金) 19:00
2020/03/07(土) 12:30/17:00
2020/03/08(日) 12:30
サンケイホールブリーゼ

■出演
尾上右近/佐津川愛美
小林健一/弘中麻紀/小林涼子/高橋健介
中島歩/小野武彦

■脚本
大森美香

■演出
岸本鮎佳(艶ポリス)

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