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パントマイムで挫折した男をリアルに描く
観客が自分と重ね想像できる作品に

2026/3/19

インタビュー

子どもからお年寄りまで、幅広い層の観客を笑いやユーモア、グッとくるストーリーで包む、パントマイム・アーティストのが~まるちょば。今年はGAMARJOBAT THEATRE 2026「ピストルと少年」と題した新作を4月4日(土)にCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、4月5日(日)にアクリエひめじ 中ホールで上演する。が~まるちょばのHIRO-PONが、パントマイムの魅力や目指すところ、挫折についてなどを語った。

――まず、今回の舞台ですが、一部は「大爆笑のが~まるちょばショーと短編作品」です。これはおなじみのお客さんを巻き込んだパフォーマンスになるのでしょうか。

お客さんと共に作る時間はありますよ。また、「初めての手術」という昔の短編の再演を久しぶりにやります。皆さんが思うステレオタイプのパントマイムの時間もありますね。

――昨年のが~まるちょばの公演で、HIRO-PONさんがお客さんを〝いじり〟、お客さんが抱腹絶倒もののパントマイムや芝居を見せてくれました。観客のパフォーマンスであんなに笑ったのは初めてです。

喜んでいただけて嬉しいです。あれは、評価が分かれるところもあるんですよ。お客さんのいじりを期待してない人もいて、難しいところがある。でも皆、そういう能力があるんですよ。こっちがお客さんを乗せるという技術を高めていかなければいけないのもあるんですが、大抵のお客さんが意外とやってくださいます。

――関西は特に面白くてノリがいい人が多いのでしょうか。

人選で左右されますね。関西に限らずですが、気をつけないと、ちょっとやりすぎちゃう人がいる。関西はその傾向が強いですね(笑)。

――HIRO-PONさんから指名されたら、自分も笑わせて客席を盛り上げないと、と思う人が多いのでは。

その笑わせないと、という感性は東京や地方の人にはないんですよ(笑)。そこは関西人の気質なんでしょうね。でも地方の人がノリが悪いというわけでもない。僕は世界35カ国ぐらいを訪れていますが、あの国はあんな気質だとかはありますけど、結局は人なんですよね、どの国でも。今回の作品は日本人気質でやらせていただいています。

――二部の「ピストルと少年」は新作です。

定期的に新作を作らなければ、僕のスキルアップにならないと思っているので、たくさん作ろうと思っているんです。僕のパントマイムは、演劇であって芝居である。でも世の中は、パントマイムはパフォーマンスだと思っている節があり、『パフォーマンスだったらいいや』と、二の足を踏む人の気持ちを変えてみたいという思いがあって、作品名を初めてタイトルにしました。

パントマイムは何で喋らないのか、何で舞台セットを使わないのかというと、それには意味があるんです。例えば、僕が飲み物を飲むシーンで、「コーラ」と言ったり、分かるようにしたりしたら、コーラにしか見えなくなる。でも飲んだ後、まずいという顔をしたら、何を飲んでいるかは 100人いれば 100通りの見え方があるんですよ。その人の持つ経験でイメージを想像できることがパントマイムの面白さなんです。作品の内容を先に言ってしまったらそういうものになっちゃう。だからいつも言わないようにしているんです。

今回、チラシに書いてある範囲内で言うと、「挫折を経験した男がたどる数奇な人生に幸せはないのか?」というストーリー。主人公は日本にいる人の設定で、お客さんが自分と重ねて思い入れを持ってもらえるような作品です。僕が舞台の上に立って演じていますけど、自分の経験と照らし合わすことができる。そうやって見られるのがパントマイムの特性でもあるんです。

――これまで、多くのキャラクターを演じてこられましたが、役作りはどのようにされているのですか。今回は少年役だと想像しますが(笑)。

いや、少年じゃないかもしれないですよ(笑)。役作りは役者の醍醐味で、すごくやってみたくて、ある時、やってみたんですけど、そうするとパントマイムが面白くなくなるんです。

例えばですよ。役所広司さんみたいな感じで役所さんを演じるとしたら、セリフを喋る映画や舞台だったら成り立つんですけれど、パントマイムでやると意外に役が〝立たない〟んですよね。伝わらないというか。そこがすごく難しくて。皆、生きていて、感情が動いて生活しているわけじゃないですか。それはもう必然として日常があるからなんですけど、役者はそれを改めてやらなければいけないんです。改めてやるっていうことは、自分の感情をコントロールすることなんですよね。パンがないのに美味しいという感覚を呼び起こして表現する。それができた上で、他のキャラクターを演じなければいけない。

例えば、木村拓哉さんは何をやっても木村拓哉さんだと言う人がいるけど、木村さんは木村拓哉という感情をきちんとコントロールして映像の中で役者として生きているんですよ。それはそれですごく難しいことなんです。役が立たないっていうのは、単に僕がまだ未熟でそれができていないのかもしれない。発展途上なんですよね、パントマイムは。

――では難しかった役は何ですか。

演じたことはないんですけど、シリアスな女性かなぁ。自分が女性を演じるとなると、カツラをつけて、ミニスカートをはく。そうするとどうしてもコメディになってしまうんです。いつかはシリアスな女性もやってみたいとは思っています。でも1時間以上もセリフをしゃべらないでストーリーがあるパントマイムをやる人を僕は見たことがない。先人がいないから学ぶものはないんですよ。古くはマルセル・マルソー(フランスのパントマイム・アーティストの第一人者)が短編作品でやっていて素晴らしいんですが、マルソーの表現と僕の表現は目指すところが違うんです。マルソーはかなり芸術に偏ってやっていると思うんだけど、僕はよりリアルに伝えたい。パントマイムの将来を考えた時に、リアルに近づけた表現の方が受け入れられやすいだろうし、面白いものができるんじゃないかと思っています。

――先人がいないというのは、大変なことですよね。

大変だと思うけど、嬉しいことでもありますよね。人のやってないことをやらせてもらっているし、競争相手もいないしね。楽しいし幸せだなって思います。パントマイムをやりたくても、経済的な理由でできない若い人もいるから、僕が劇場に立てるのはラッキーだし、恵まれていると思います。

――「ピストルと少年」で挫折を経験した人を描かれるそうですが、HIRO-PONさんは挫折したことはありますか。

うーーーーん、考えつかないですね…。心が傷つくというのは日常で結構いっぱいありますよ。そういうのはちょっと挫折とは違いますよね。いい意味でバカで、挫折を感じないようにしているのか(笑)? 挫折って何だろう…。逆に、ありますか?

――ありますよ。英語を一生懸命やってはみたものの、思っている以上に上達しなかったとか。語学の才能がなかったのです。

それは挫折とは思わないな。それ、自分で決めているだけですもんね。できないって言っているけど、やりたくないんでしょう? 面倒くさくてやりたくないってことじゃない? 本当の挫折っていうのは、本当にやりたいんですよ。やりたいんだけれど、何かの障害や外的作用があってできないっていうのを挫折っていうと思う。それはやらないだけだから、挫折じゃない。

――ううっ、なるほど。図星かもしれません(笑)。

僕は昔、煙草を吸っていたんです。3ヶ月間やめて 1本ぐらいいいだろうという1本が 2本になり、 2本が4本になる。これは買わないようにしようと。そしたら隣に吸っている人がいて、「1本いいかな」って、また吸うみたいになる。その時に悟ったのが、俺はタバコをやめたいわけじゃないんだと。やめたいヤツはやめるんです。でも吸うということは、やめたくないんでしょ。

役者になりたい人に「どうやったらなれますか?」と聞かれたことがあるんですけど、僕は諦めないことだと言いました。だって、日本は今、戦争が起こっているわけでもないし、いくらでも、どうにかしてでもできる環境にあるわけじゃないですか。理由をつけてやらないっていうのは、やれないんじゃなくてやらないんですよね。もしかしたら、僕も今後、経済的な理由とか色んなことが要因で、パントマイムができない状況になるかもしれない。でもその時はやれないんじゃなくて、やらないんだと思う。

――おっしゃる通りです…。

僕はタバコは20代の時にやめました。それにお酒も飲めないタイプ。でも全然飲めなくてよかったと。お酒で失敗している人をいっぱい見ていますからね。

――息抜きには何をされるのですか。

忙しくて、休みが取れたら何をしようって考えたら、映画を見たいなって思います。旅も別に興味なくて。ただ見たいのは、映画しかり建築物しかり人が作ったもの。自然なんてすごすぎて、もう太刀打ちできないから、どうでもいいんですよ。人が作ったものだったら、自分やパントマイムに反映できるから、僕はすごいやつを見た時のエネルギーの方がエネルギーになる。頑張っている人を見るとやっぱり心が動く。いい映画を見ていい役者さんを見て、こんなにいいものが作れるんだって。僕も頑張らなきゃなと思うし、僕の心を動かしてくれたら、僕も人の心を動かしたいと思える。人間はここまでできるんだとすごいエネルギーになりますよね。

――「ピストルと少年」もそんな作品だと期待しています。

今こうやって言葉で喋っていることで認識できるとも思わないし、やっぱり百聞は一見に如かずなので、人間には五感がありますから、その五感を研ぎ澄まして、劇場に足を運んでもらいたいですね。世の中で認知されているパントマイムというものに加えて、舞台でこれだけ言葉を使わずに、お客さんの心を動かすことができる表現だということを知ってもらいたい。見逃してほしくないです!

取材・文 米満ゆう子

 

GAMARJOBAT THEATRE 2026 『ピストルと少年』

第一部 が〜まるちょばショー/短編作品
第二部 新作長編作品「ピストルと少年」

大阪公演

|日時|2026/04/04(土) 
    ①開場11:30/開演12:00  ②開場16:00/開演16:30
|会場|COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
▶▶公演詳細

兵庫公演

|日時|2026/04/05(日) 15:30開場 / 16:00開演
|会場|アクリエひめじ 中ホール
▶▶公演詳細

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