
2026/2/16
インタビュー
――やりたいと思っていた『逃奔政走』の京都公演を終えて、いかがでしたか?
鈴木「終わった時にはもう、力尽きて、次を考える余裕はありませんでした。作品は本当におもしろく、楽しくやらせていただきましたけれど、自分としては演出家の期待に応えきれなかった反省点が非常にあり、今回はその反省点を乗り越えたいです。」
――コメディが続きます。鈴木さんにとって、コメディを演じる醍醐味とその魅力は?
鈴木「目の前のお客様が喜んでくださることですね。テレビドラマや映画ですと、お客様の声を直接聞くことがなかなかないので、笑い声やお客様の体温などが感じられて本当に楽しいです。世の中には辛いニュースがたくさんあるので、少しでも生きてるって悪いことばかりじゃないって自分も思いたいですし、お客様にも楽しんで明日への元気にしていただけたらという気持ちでいます。でも、コメディは難しいです。もう日々勉強です。」

――お葬式コメディの内容と、今回挑戦したいことは?
鈴木「どこの家庭でも実はあるよね、という、お葬式の“あるある話”だと思います。いただいているプロットとしては明るいです。細かいことは、まだ台本をいただいていないので決まっていませんが、個人的には自由に暴れたいなと。家族は誰も幽霊である私が見えないし声も聞こえないですが、蘭寿とむさんの演じる女性だけが幽霊が視えるんですよね。なので、私はとにかく蘭寿さんを困らせることに尽力したいと思います(笑)」
――今回の物語は、冨坂さん自身の家族がモデルだとか?
冨坂「家族構成は大体一緒です。長男・長女・次男の三兄弟で、母の葬儀の時に3人共同で喪主をやることになったことも。ただ、葬儀のやり方で揉めた経験はないですが(笑)。僕はこれまでホームドラマや人情ものなどをあまりやってこなかったので、今までやったことがないことを、と。でも、もともとは変なシステムのコメディをやりたいと思っていて、それと組み合わせるために、みなさんが入りやすい物語を選びました。」

――その“変なシステム”のコメディ誕生のきっかけと経緯を教えてください。
冨坂「僕は日本で三谷幸喜さんが確立されたようなシチュエーションコメディが好きで始めたんです。でも、今やるのであれば何かアップデートしたいなと思っていて。その中でたどり着いた変な実験の1つの形が、エクストリーム・シチュエーションコメディです。きっかけは…変な上演形式のことを探っていて、友達と酒を飲んでいた時のふざけ話から生まれたという感じで(笑)。前回の『逃奔政走』で保奈美さんとコメディをずっと一緒にやってきて、京都公演が終わった時に、もっと派手に威勢のいいコメディをやってもらいたいなという思いがあったので、この一番アクティブでバカみたいな企画をご提案しました。」

“エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)”とは:出演者全員が消費カロリーを脈拍から計測する器具を手首に付けて演技する。芝居の後半、誰が一番カロリーを消費したかを競う競技が、物語と同時に進行するというシステム。解説者が登場し、消費カロリー数が積み上がっていく変化を舞台上の映像で見せながら実況中継する。審判も登場。数値を稼ぐためにやりすぎたり、話の筋や演技を逸脱すると反則の笛を吹かれ、減点に。イエローカードもあるなど、サッカーの試合のようなルールでカロリー消費量を競う競技。鈴木と蘭寿が頭の2チーム制で、芝居を続けながらチーム戦と個人で優勝を競う。
――ええっと演劇スポーツ?みたいな…よくわからないんですが?
鈴木「わからないでしょう?(笑)。私は幽霊の母親という役柄でありつつ、舞台上で一生懸命お芝居をしてカロリーを消費しようとしている鈴木保奈美であるという。その両方の人物として舞台上に存在するということだろうなと現時点では理解しています。出演者全員がその状況で、今どっちなんだろうみたいな感じをお客様に目撃していただく。今までにない新しいタイプのイベントとして捉えていただいてもいいのかなと思います。」
冨坂「芝居の中身の笑いも取りたいし、この仕組みからの笑いも取りたいという感じです。役者さんには、必死にカロリーを消費して数値を稼いでほしいという気持ちと、とはいえお話がわからないようにはしないでくださいという相反した2つの気持ちがあります。数値はその時次第。ヒーローインタビューとか、終演後にSNSで表彰できたりしたらいいな。」

――こんな規格外のコメディのお話を聞いた時、どう思われましたか?
鈴木「冨坂さんは新しいことができないかといつも考えていらして、その心意気、チャレンジ精神だけでも素晴らしいと思います。新しいアイデアを試すのはとても素敵なことだし、やったことのないことに挑戦させてもらえるのはとても幸せなので、ぜひ参加したいと。」
――カロリー消費を競う、体力勝負の舞台になりそうですが、大丈夫ですか?
鈴木「ジムに行ったりはしているので、けっこう筋肉量ありますから大丈夫です。私、負けず嫌いなので、泣き言を絶対言いたくないタイプですし。」
冨坂「世間の皆さんが思っているより保奈美さんは体力派です。」
鈴木「体力あります。『逃奔政走』の時も、30歳ぐらいの俳優さんに『保奈美さん、体力お化けっすね』って言われましたから(笑)」
冨坂「ちなみに1幕1場で約100分、休憩なしのお芝居で保奈美さんは出ずっぱりです」。鈴木「え、そうなんだ……幽霊、水飲んでもいいことにしていいですか?」
冨坂「仏壇にある水は飲んでいいんじゃないですかね(笑)」
――おふたりから、みなさんへのメッセージをお願いします。
鈴木「基本は楽しく笑えるお葬式ホームコメディで、ただ観ているだけでおもしろいです」。冨坂「そしたら不思議なことが始まるぞ、という認識ぐらいで来ていただいて。ま、後半はスポーツだと思って応援してもらえればって感じです。」
鈴木「この作品を、自分が劇場でお客さんとして観られないのはとても残念(笑)。今までにないスタイルの演劇体験を、是非、劇場で目撃していただきたいと思います。」

取材・文:高橋晴代

エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)
『汗が目に入っただけ』
■脚本・演出
冨坂友
■出演
鈴木保奈美 足立梨花 小越勇輝
西野創人 蘭寿とむ 田中要次
前田友里子 斎藤コータ 榎並夕起 津和野諒
古谷蓮 中田顕史郎 伊藤圭太 浅越岳人 鹿島ゆきこ
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2026/04/03(金)~2026/04/19(日)≪全18回≫
|会場|IMM THEATER
▶▶公演詳細
|日時|2026/05/02(土)~2026/05/03(日・祝)≪全4回≫
|会場|シアター・ドラマシティ
▶▶公演詳細