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【北川拓実】勇気を持って自分の信念を諦めないで燃やし続けてほしい

2025/5/26

インタビュー

ミュージカル「チョコレート・アンダーグラウンド」

もし、政府がチョコレートを食べることを禁止したら…。そんな極端な政権が国を牛耳り、チョコレートを自由に食べるために子どもたちが闘うさまを描いたミュージカル「チョコレート・アンダーグラウンド」が世界初演される。日本でもファンの多い、イギリスのアレックス・シアラーの小説が原作で、チョコレートが大好きな主人公スマッジャーを演じるのは、本格的なミュージカルは初めてだという少年忍者の北川拓実。北川が作品にかける思いを語った。

――まず、オファーを受けていかがでしたか。

「ミュージカルに出演することは一つの目標であり、夢でもあったので、すごく嬉しいですね。演出の石丸さち子さんをはじめ、共演者もはじめての方ばかりなので、その中に飛び込んでいくのはプレッシャーもあります。この作品自体が世界初のミュージカル化で、しかもその主演を務める責任も感じています。色んな気持ちが入り混じっていますが、とにかく光栄で幸せですね。」

――日本では2004年に出版されてブームになった「チョコレート・アンダーグラウンド」ですが、北川さんは今回初めて作品を知りましたか。

「はい。オファーをいただいて、原作とその時に出来ていた台本を読みました。強く思ったのは、選挙に行かないことや無関心の怖さですね。皆が興味を持たずに、何事も人任せで誰かがやってくれるだろうという気持ちで過ごしていたら、取り返しのつかない、恐ろしいことになってしまう。すごく怖いなと危機感を覚え、読んでから意識が変わりました。」

――どう意識が変わりましたか。

「皆選挙に行かなかったことによって、〝健全健康党〟という政党が実権を握り、チョコレート禁止法が発令され、チョコレートを食べると捕まって、収容所送りになってしまう。僕はあまり政治について勉強不足なので、そこがすごくリンクしていると思いました。題材がチョコレートだからマイルドに聞こえますが、チョコレートを別のものに置き換えると、いろいろ考えられます。日本では、皆、平和だから大丈夫だろうという気になっているかもしれないけど、ある日突然、戦争が始まるとなったら遅いし、なんであの時、止めるような行動をしなかったんだろうと考えると思うんです。」

――演じる少年のスマッジャーについてはどう思いますか。原作にも台本にも彼の年は書かれていませんよね。

「石丸さんと、スマッジャーは15歳ぐらいかなとお話ししていました。中学生と高校生の間ぐらい。僕は21歳なので近いですね。彼は普通の子どもなんですが、怖いもの知らずだからこそ、突き進んでいける。逆に僕自身はそういうタイプではないから、どう演じていこうかなと思っています。今でも少年忍者のメンバー同士でアニメのマネや鬼ごっこをやったりするので、子どもらしい部分はあるんですけど(笑)。
一方、スマッジャーの親友のハントリーは現実的で考えて物事を進めるタイプ。僕は考え方はハントリーのほうが近いんです。スマッジャーみたいに、とりあえず進んでいこう、当たって砕けろというのではないから、スマッジャーを尊敬しますし、素直にカッコいいなと思います。」

――スマッジャーは反骨精神や勇気があり、ハントリーは冷静に物事を客観的に捉えていますね。

「その二人のペアだからこそ化学反応が起きて、絆が素晴らしい。二人だからこそ、世界を変え、何事にも立ち向かっていけるんだろうなと思います。」

――ハントリー役の東島京さんの印象はいかがですか。

「京(みさと)君とは初めて共演します。ミュージカルのわからないことをやさしく教えてくれたり、話しかけてくれます。僕たちもハントリーとスマッジャーのようにならないといけないなと思い、敬語なしでため口で話そうと、今は京と呼んでいるんです。仲良くなるために、この前は二人で写真シールを撮りに行って、「これからよろしくね」と言い合いました(笑)。」

――演出家の石丸さんから言われていることはありますか。

「ハントリーを引っ張って、立ち向かっていく役なので、それだけの熱量が必要。彼にうんと言わせなきゃいけない。セリフを言う時に「もっと説得力を出して」と言われています。パワーを込めて声を大きく出してみたりして、エネルギーあふれる感じで演じなきゃいけないなと思っています。」

――子ども時代のことを思い出しながら演じる部分もありますか。

「それもありますけど、少年を演じようとしてはいけない。少年をかわいく演じるのではなく、素というか、思ったことを言っちゃうぐらいのありのままの感情で表現したいですね。それがスマッジャーだと思うので。もちろん、役としてこうやっていこうというのはありますが、考えすぎちゃいけないと思っています。」

――ダンスや歌のシーンはいかがですか。

「踊りについては普段から振付を覚えて踊ることは、中学生ぐらいからやっています。ダンスは大好きだから楽しみですね。
ただ歌は結構、苦戦しています(笑)。スマッジャーは楽曲も多いし、ただ歌うのではなく、感情を乗せてセリフのように歌わなければいけない。ミュージカルは、普段の歌い方とは違うと思うので、そこは苦戦していますし、頑張っていかないといけない。そうじゃないとお客さんに届かないと思うんです。伝えるという意味でもこれから稽古を積んで、完成度を高めていきたいですね。」

――バレンタインやチョコレートにまつわる思い出はありますか。

「正直な話、僕はバレンタインとは無縁で(笑)。お母さんからはもらったことがあるんですが、同級生からはもらったことがないですね。学校ではモテないタイプなんです (笑)。モテるよりも、不思議ちゃんとか何を考えているのか分からないと言われることが多くて(笑)、近寄りがたいのかなと。僕の記憶ではもらったことがないですね。悲しいですけれど。」

――ではもし、物語のようにチョコレートが禁止されたらどうしますか?

「スマッジャーみたいに立ち上がって、チョコレートのために闘うことはできないかもしれないけれど、選挙には行って、選挙でチョコレート禁止法をなくしたい。勇気を持って自分が考えていることや大事なことを、諦めずに燃やし続けることが、この作品の一番伝えたいことだと思うので、僕もそういう行動をしたいです。」

――国民一人一人が政権にノーといって、皆で団結して変わっていく物語です。

「日々過ごしていくとそういう気持ちは忘れちゃうし、どうせ無理だろうと思っていくんですよね。大人になり成長するにつれて、知識や考えが深まってより現実的になっていく。大人が無理だろうと思うことも子どもは本気になれるし、その発想力もすごい。この作品で、子どものころはあんなことを思っていたなということに気づかされますし、その気持ちを忘れないで、燃やし続けてほしいと思います。また、登場人物の大人たちはスマッジャーやハントリーを決して子ども扱いしないんです。同じ目線で考えて協力し、一緒に立ち上がってくれる。僕もそういう大人になりたいですし、憧れますね。皆さんの気持ちが、少しでも勇気に変わるような作品を届けられるように僕たちも頑張りますので、ぜひ、劇場まで足を運んでもらえたらうれしいです。」

取材・文 米満ゆう子

 

ミュージカル「チョコレート・アンダーグラウンド」

■原作
アレックス・シアラー
■翻訳
金原瑞人(求龍堂刊)
■脚本・作詞
高橋亜子
■音楽
オレノグラフィティ
■演出
石丸さち子

■出演
スマッジャー・・・北川拓実
ハントリー・・・東島京
フランキー・・・木村来士

モファット・・・平野綾
ジョン・ブレイズ・・・岡田浩暉
バビおばさん・・・土居裕子

様々な役を演じる・・・浦嶋りんこ まりゑ 小松季輝 佐藤匠 中川賢 陰山泰

<様々な役を演じる>
健全健康党の党首、党の男、警官隊、スマッジャーの父と母、
ハントリーの父と母、依存症患者、 少年団団員、チョコレート捜査官、
警察本部長、語り部、学校の生徒など多数 約40役を演じ分ける

▶▶オフィシャルサイト




大阪公演

|日時|2025/06/21(土)≪全2回≫
|会場|森ノ宮ピロティホール
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