2025/4/13
公演レポ
――まず、出演が決まった時の気持ちはいかがでしたか。
東「オーディションの合格の通知が届いた時は、実感がわかなくて。稽古もこれからという段階ですが、こうして取材会をしたり、プロモーションで楽曲のMVを撮ったりすることで、いよいよ始まるんだと今はとても楽しみです。」
松下「もちろん、『キンキーブーツ』のことは以前から知ってはいたんですが、まさか自分がこんな素敵な作品に出られるなんて。オーディションの話もいただけるとは思っていませんでした。受かった時は、すごく嬉しかったのと同時に、本気で頑張らなきゃいけないなという思いになりました。」
――『キンキーブーツ』は、経営難の靴工場の跡取り息子チャーリー(東、有澤樟太郎のダブルキャスト)が、ドラァグクイーンのローラ(松下、甲斐翔真のダブルキャスト)と共に、老舗の靴工場をドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生させていく物語です。お二人が同じ舞台に立つ公演もありますが、お互いどこに期待されますか。
東「一緒に舞台に立てるのは、いつも優也くんを舞台の客席から拝見していた僕にとってはとても嬉しいことです。チャーリーとローラの関係を築いてこそだと思うので、どのように一緒に役作りしていけるか、すごく楽しみですね。」
松下「ダブルキャストの4人の中では、年齢的に自分が一番上。以前、『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』では有澤くんとダブルキャスト出演させていただきましたが、この年齢になって、年下の方とダブルキャストになる機会が増えてきたので、年上として引っ張っていけたら。あと、新しい世代のパッションやソウルみたいなものが稽古場から感じられるのを楽しみにしています。」
――ビジュアル撮影で、キンキーブーツを履いてみていかがでしたか。
松下「身長は高くなりますよね(笑)。意外と軸は安定するんだなと。身体がフラフラするより安定したポジションにおける。慣れてきたら歌は歌いやすいんじゃないかと思いましたね。」
東「僕もフラフラするかなと思っていたら、意外に歩きやすかったです。ただ、チャーリーはうまく歩けない設定なので、履きなれてない感を逆に勉強しなきゃなと思っています。」
――お二人は『キンキーブーツ』をご覧になったことがありますか。
東「僕は2016年に韓国で拝見しました。」
松下「僕はウエストエンド版の映像を見ています。」
――何に惹かれましたか。
東「『EVERYBODY SAY YEAH!』という楽曲でキャストと観客が盛り上がっていくシーンは、客席から見ていても楽しそうで、引き込まれました。しかも韓国は歓声もすごくて、舞台の途中でもスタンディングオベーションが起こるくらいだったので、文化の違いはありますが、ハッとさせられて。この作品に出てみたいなと思いました。」
松下「初めて見る人も多いと思うんですが、何回も見ている方も多くいらっしゃるので、お客さんと出演者が一体化するんです。そんなミュージカルはそうそうないと思うんですよね。」
東「うんうん。」
松下「そこで自分たちがパフォーマンスできるのはすごく幸せなことで楽しみにしています。」
――大阪でも初演からお客さんの反応は熱狂的でした。今回、「俺たちのここを見てほしい」というところは?
松下「俺のダンス、京橋仕込みやで(笑)」
東「京橋なんですね(笑)」
松下「そうなんですよ。僕は昔、京橋でずっとダンススクールに通っていました。そこですかね!」
東「アハハッ。東京で開幕してから大阪に行くので、東京で熟成された作品が大阪で、また変わってくると思うんです。その熟成具合を皆さんに期待していただきたいです。」
――これまで『キンキーブーツ』に関わった人の様々な思いが込められている作品だと思いますが、どういった部分を引き継いでいきたいですか。
東「世界からも日本からも愛され、大切に作り上げられた舞台なので、演出家や出演者の方がどういう思いでやってこられたのか、聞けたらいいなと思います。その中で引き継ぐものと新しく生まれるものを見つけていければ嬉しいです。」
松下「稽古をやりながら、きっとそういうものが見つけていけると思います。ただ、『キンキーブーツ』に限らず、長く愛されている作品を初めてやらせていただく時は、学ぶところからスタートするものだと思うので、自分がどうというよりも、作品を深く理解してリスペクトを持ってやる。そうしていくうちに、見えてくるんじゃないかなと思います。」
――松下さんは、ドラァグクイーンを演じるうえで、役づくりにおいて参考にした人はいますか。
松下「オーディションの時に参考にしたのはビヨンセでした。今まで、ビヨンセや、その他のディーバたち、ヒップホップやR&Bの文化が好きで聴いたり、映像を見たりしていたんですが、自分でやるという目線では見てこなかった。今回、そこを参考にしてオーディションに挑みました。これからも参考にすると思うし、ドラァグクイーンの方々を見て研究もしようと思っています。」
――ビヨンセをイメージして歌ってみていかがでしたか。
松下「意外といけてるかもと思いました(笑)。“意外と肩の入れ方、やれてるんちゃう?”と(笑)。ビヨンセは女性的でありながらカッコいい部分もあり、男女にとらわれていないと思うんです。例えば、「爪見せて」と言われたら、見せるしぐさにもらしさが出るじゃないですか。大きな動きじゃなくて、本当にちょっとしたしぐさで、その人がどういう人かというのが分かる瞬間がある。その部分をローラを演じる上で研究したいです。」
――舞台は視覚的に華やかなシーンも多いですが、キャラクターが父親との関係や、自分らしくありたいと葛藤する繊細な部分も描かれていて、とても共感できます。
東「チャーリーは頭でっかちな部分があり、猪突猛進になってしまうがゆえに他者を傷つけてしまうし、後から自分の過ちに気づく部分が多いかなと。自分がやってしまった失敗や父親に対しての思いとか、繊細さだけでは表せない、彼の心の中で揺れ動くものを表現できたらと思っています。」
松下「僕らも人前に出る仕事をさせていただいていますが、自信がなくても常に自信があるようにやらなければいけないし、本当に自信がある時もある。実は裏では体力的にも気持ち的にもしんどい時もある。それは常につきまとうんです。だからローラをキャラクターとしては見ないようにしたいです。繊細さとダイナミクスがローラの魅力でもあるので、そのリアルをしっかりと自分の感情で落とし込んで表現できるようにしたいと思います。」
――今回、初めて見る人も多いと思いますので、そんな人に向けてメッセージをお願いします。
東「音楽や舞台の華やかさから、ミュージカルに馴染みのない方でも楽しんでいただけます。初めて見る境地に足を踏み入れてもらえれば。」
松下「多くのファンがいらっしゃる作品ですけど、初めての方にこそ、向いている作品じゃないですかね。」
東「うん、本当に。」
松下「何も考えずに、劇場に来て席に座ってくだされば、楽しめる作品です。僕らも初めて出るので、初めての方は一緒に初めてを楽しみましょう!」
取材・文:米満ゆう子
ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」
■出演
チャーリー・プライス:東 啓介・有澤樟太郎
ローラ / サイモン:甲斐翔真・松下優也
ローレン:田村芽実・清水くるみ
ニコラ:熊谷彩春
ドン:大山真志
ジョージ:ひのあらた
パット:飯野めぐみ
トリッシュ:多岐川装子
ハリー:中谷優心
エンジェルス:穴沢裕介、佐久間雄生、シュート・チェン、大音智海、工藤広夢、轟 晃遙
エンジェルス/スウィング:本田大河、長澤仙明
サイモンシニア:藤浦功一
ミスタープライス:石川 剛
リチャード・ベイリー:聖司朗
マージ:舩山智香子
マギー:伊藤かの子
ジェンマ・ルイーズ:熊澤沙穂
フーチ:竹廣隼人
マット:趙 京來
ほか
■脚本
ハーヴェイ・ファイアスタイン
■音楽・作詞
シンディ・ローパー
■演出・振付
ジェリー・ミッチェル
■日本語版演出協力/上演台本
岸谷五朗
■訳詞
森雪之丞
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2025/05/26(月)~2025/06/08(日)≪全18回≫
|会場|オリックス劇場
▶▶公演詳細