2025/3/8
インタビュー
及川眠子(作詞)、中崎英也(作曲)の全面プロデュースにより誕生した、3人のドラァグクイーンによる新宿2丁目発の本格派ディーヴァ・ユニット、八方不美人。2018年12月にデビューして以降、ドラァグクイーンとしてのきらびやかなビジュアルはもちろんのこと、レベルの高い歌唱力などパフォーマンス面も評価され、アーティストとしての注目度が増している。そんな八方不美人が5月7日に初の大阪でのワンマンライブ『さんすくみ』をBanana Hallで開催、さらに5月14日にはフルアルバム『さんすくみ』もリリースする。そこで今回は、メンバーの一人であるドリアン・ロロブリジーダが、タレントのミッツ・マングローブさんがパーソナリティを務めるMBSラジオ『ミッツ・マングローブのOSAKA・ん!メガミックス』に生出演した際の模様をレポートするほか、アルバムや大阪公演の見どころなどについて単独インタビューもおこなった。
3月6日放送のMBSラジオ『ミッツ・マングローブのOSAKA・ん!メガミックス』に生出演した、ドリアン・ロロブリジーダ。そんなドリアンのことを、パーソナリティのミッツ・マングローブさんは「新世代を束ねて活動している」とドラァグクイーン界のキーパーソンであると紹介。一方、ドリアンも「ミッツさんをはじめ、先輩がキラキラやっていたので『いつか私も』と思って」とドラァグクイーンの世界に足を踏み入れたきっかけはミッツさんだと振り返った。
近年、Netflixが制作した映画『エゴイスト』(2003年)や恋愛リアリティーショー『ボーイフレンド』(2024年)にスタジオMCとして出演するなど、タレントとして活動規模が広がっているドリアン。ミッツさんは「あなた、個人で(仕事を)やってるのよね?」「(Netflixの番組は)夢があるらしいわね。ゼロが一つ、二つ、違うときもあるんでしょ」とギャラの話に踏み込んで、ドリアンもたじたじに。さらにミッツさんは「(2024年)2月29日、私が大谷翔平選手の入籍に打ちひしがれているときに、ドリアンも…」と戸籍上は女性のトランスジェンダー男性と結婚したことについて触れ、ドリアンから「二人で映画を見たり、料理をしたり。時間があるときは二人でお風呂にも」と新婚エピソードを聞いて「はぁーっ!」とため息を漏らした。
そんなミッツさんも、八方不美人のアーティストとしての実力に関して「(歌が)うまいんですよ。この人たちはすごいの。血管にくるんですよ、音圧で」と独特の言い回しで絶賛。5月7日開催の大阪でのワンマンライブ『さんすくみ』についても、ミッツは「八方不美人は(ライブの)後半がすごいの」と見どころを口にした。そのほか、番組リスナーから「ドリアンさんがゲストと聞いて初めてメールしました。梅田に今いらっしゃると聞いて感激です」「YouTubeチャンネルもいつも見ています」とメッセージが届くと、ミッツさんは「(チャンネル登録者数は)もうすぐ10万人? やっぱりNetflix(の出演者)は違いますなあ!」と、改めてドリアンの活躍を感心の声を上げるなどした。
また番組出演前には八方不美人の活動について、ドリアンに話を詳しく訊いた。
――八方不美人の活動も間もなく7年になりますね。
「グループ結成のきっかけはお酒の場の勢いでしたが(笑)、3人の仲がとても良く、一緒にステージを踏んでいるとそれぞれのいろんなものが融和されていく実感があります。得意、不得意をカバーし合うことができていますし、八方不美人としての“人格”が形成されていっています。何より作詞の及川眠子さん、作曲の中崎英也さんという大作家のおふたりから楽曲をいただき、それを歌える喜びが結成時からずっとあります。」
――三人で支え合っている、という部分が5月7日の大阪公演や5月14日リリースのアルバムのタイトルでもある『さんすくみ』にも表れているのでしょうか。
「『さんくすみ』は、「三竦み」をひらがな表記にしたもので、それぞれ三つが絶妙のバランスを保っていることを意味しています。じゃんけんでたとえると、グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つみたいな。八方不美人は異なる個性を持った3人が、それぞれの魅力を発揮しながら絶妙に調和し、それをみなさまにお届けすることができています。ですので、それをタイトルにしようとなりました。この言葉は、今の我々の状態を表すのにとても良い言葉です。」
――なぜそんなに3人のバランスが良いのでしょうか。
「ドラァグクイーンをしている時点で3人とも人手なしで、まっとうな人生は歩んでいませんから(笑)。でもそういうお互いの業(ごう)みないたものをうまく包括し合えています。たとえばリーダーのエスムラルダさんは常識や良識がある方ですが、時間の使い方がマイペース。ベテランの余裕がありすぎて、ライブでも開演2分前にまつ毛をつけ始めますから。でもそれがエスムラルダさんのお人柄。ちあきホイみさんも歌唱力が素晴らしいけど、それ以外はポンコツでいらっしゃいます。もちろんかく言う私も、残りの二人から見たら欠点だらけの存在だと思います。ただ、それぞれのそういう部分も、愛せたり、許せたりするんです。」
――『さんすくみ』の収録曲「ジーザス!」はまさに、どんな相手であっても最終的には「許す」という内容でしたね。
「同じような内容を女性歌手が歌うとドロドロしすぎて、男性歌手だとリアリティに欠けるような気がします。我々のようなドラァグクイーンが歌うことで届きやすくなっているんです。ネガティブな感情や心のえぐみも、この3人なら晴れやかに昇華できる。どんな恨み、辛みがあっても我々が歌うことで笑い飛ばせるところがあり、その背景にある愛も感じられるのではないでしょうか。」
――八方不美人はこれまでも「愛」について歌った曲がたくさんありますね。
「みなさんにはまず、自分を愛せるようになってほしい。自己肯定感まではいかなくていいから、何か失敗しても、そんな自分を笑って許せるようになってもらいたいんです。そうやってご自身のことを許せると、他人も許せるようになるので。つまり、心に遊びを作っておくということ。今はそういう気持ちに窮屈さがあるから、誰かをSNSで攻撃したりするのではないでしょうか。失敗を指摘するのは必要だけど、「まあ、そんなこともあるよね。だって人間なんだもん」と捉えられるようになることも大切。そのためにはまず、ご自身を愛でる。それができる人が増えると、もっと世の中が柔らかくなると思います。」
――なるほど。
「あと、みなさんが怒りにとらわれすぎないためにも、八方不美人がいます。私たちは藁人形がわりなんです(笑)。身代わりになって、みなさんの怒りをおどろおどろしく歌っています。そのためにも、とにかくたくさんの人に幸せになってもらいたい。幸せが足りていないから、どうしても他人がやることを気にしすぎちゃう。そしていろいろ書いちゃう。「私たちの姿を見て、みんな幸せになってくれ!」と願いながら歌っています。」
――5月7日に開催される大阪・Banana Hallでのワンマンライブ『さんすくみ』に足を運べば、きっと誰もが幸せになるのではないでしょうか。
「その通りです! 40代、50代のドラァグクイーンがジタバタと歌って、踊っているところを見れば悩みはきっと吹き飛びます。パフォーマンス面では、3人のハーモニーや声が合わさった瞬間を楽しみにしていてください。ハーモニーのシャワーが生まれると思います。でも、我々の良いところはそんなに声を溶け合わせようとしていない部分。それぞれが「我が、我が」ですから。歌の面では調和をあまり心掛けていないのですが、そこが「いいな」と感じてもらえるのではないでしょうか。大阪はこれまでいろいろなイベントやショッピングセンターでのステージにお邪魔させていただいたことはありますが、ライブハウスでの単独公演は初めて。ですから、初の大阪ワンマンという歴史の目撃者になってください。」
取材・文:田辺ユウキ
八方不美人
『さんすくみ in 大阪』
▶▶オフィシャルサイト
▶▶X(Twitter)
▶▶Instagram
▶▶YouTube
|日時|2025/05/07(水) 19:00
|会場|バナナホール
▶▶公演詳細