1971年のデビュー以来、半世紀を越える活動でやさしい歌声を届け続けてきたイルカ。近年では音楽仲間とのジョイントコンサートも精力的に行う中、9月からはソロツアーが再スタートし、早くも話題を呼んでいる。55周年に繋がるようにという思いで取り組んでいる公演の見どころから自作のステージ衣装、関西への思い入れ、新たな楽しみになったというSNSの活用まで、幅広い活動内容について話を聞いた。

――9月1日から2024年のツアー「あいのたね♡まこう！」がスタートしました。まずは、今回のツアーへの意気込みをお聞かせください。

「2024年は5〜8月に伊勢正三さんとのジョイントで『なごり雪』の50周年コンサートをやっていたんですけど、今回は私のデビュー55周年に向けてやっていくという思いでスタッフも制作に取り組んでくれていて、非常にありがたいことです」

――9月18日にはイルカ・アーカイブの第9弾として『ESSAY』『けさらん ぱさらん』『Delfina』」を収めた3枚組CDが発売されました。今回は、こちらの楽曲も多く演奏されるのでしょうか？

「せっかく出したので、フィーチャーしたいねと話しています。これらのアルバムが最初に発売された1986〜1990年はサウンドもバンド編成が中心だったのですが、今回はあえてアコースティックなアレンジで聴いていただこうかと思っています」

――近年ではジョイントコンサートも精力的に開催されていますが、こういった公演が刺激になってソロでの活動に反映されることはありますか？

「もともと私が活動を始めた当初のコンサートって、みんなで一緒に出演するスタイルが主流だったんです。しばらくしてからみんなソロコンサート中心の活動になっていったけど、最近になって「昔みたいにみんなでわいわいやりたいね」と始めたのが伊勢正三さんや太田裕美さんとのジョイントコンサート。お客様も同窓会のように楽しんでくださっているのですが、そうなると私もソロでの活動をしっかり取り組んで土台を作らないと、お呼びがかかっても満足なパフォーマンスができない。私にとってはジョイントもソロも両方大切で、それぞれの楽しさがあるなと思っています」

――お客様からコンサートに対する意見を聞かれることはありますか？

「最近、X（旧Twitter）を始めたので、コンサートがあった日は、すぐに反応を見ることができます。お客さんの声はすごく励みになるし、参考にさせてもらっています」

――SNSはどのようなきっかけで始められたのでしょうか。

「コロナ禍で2年半、コンサートができない時期があったから、なにかしなきゃと思って。SNSとか動画の配信ならみんなと繋がれるし、じゃ、もう今からやろうよというノリで始めました。今のところ炎上はしていません（笑）」

――12月15日にはNHK大阪ホールでの公演も予定されています。大阪や関西へのこだわりなどは？

「グループから独立したての頃、カメ吉君（夫でプロデューサーの神部和夫氏。2007年に逝去）が、「絶対に大阪でウケないとだめだ！」と言っていたので最初は緊張しました。でも、ラジオ番組のレギュラーをやらせてもらったことで名前を覚えてもらい、それからは本当に熱く長く応援してくれるようになって。『なごり雪』が出てすぐの頃に「関西フォークの神様」といわれている西岡たかしさんとツアーをさせていただいたことも関西とのご縁が深まるきっかけになりました」

――最近のステージの様子を拝見すると衣装がとてもかわいくて、こちらもファンの方にとっては楽しみな部分ではないかと思います。

「私というとオーバーオールのイメージがあると思うけど、一度ひらひらの服を着たら面白くてね。みんなもワーってなるし、つかみはOKみたいな感じで（笑）。衣装は全部自分で担当していて、着物の生地をリメイクしたり、大阪だとアメリカ村で古着を調達し、どうアレンジするか考えるのが好きなんです。私は夫が多忙で体調を崩し始めた頃からすべての活動をセルフプロデュースしなければいけなくなったんですけど、やりだしたらすごく楽しかったし、支えてくれるスタッフがいたからここまで続けられていると思います」

――イルカさんがSNSや衣装の制作などに積極的に取り組まれる姿は、ずっと応援されてきたみなさんにとっても刺激になりますね。

「コンサートに来てくださるのは同世代の方が多いんですけど、私はそんなみなさんのことを「デザート世代」と呼んでいて。人生がフルコース料理なら、私たちは今、メインが終わった後にいちばんお楽しみだったデザートを味わう時期だろうし、もう自分が着たい服を着たりして、やりたいことをめいっぱい楽しもうよと言っていて。それは還暦過ぎないと頂けないと伝えているんですが、お客様に伝えるんだったら自分が実践していかなければと思っていろいろ頑張っています」

――最後に大阪公演に来場されるお客様へのメッセージをお願いします。

「今はとにかく1回でも多くコンサートで歌を歌い、メッセージを発信し続けたいと思っています。今回、ツアータイトルに合わせて『あいのたね♡まこう』という歌を作ったんですけど、小さなお子さんでも歌えるメロディーで、私が直々に歌唱指導もしますので（笑）、会場でみなさんと一緒に歌えたら嬉しいですね。長時間のコンサートで体力が心配な方もいらっしゃるかもしれませんが、開演時間も早いし途中で休憩も挟みますから、安心してご来場ください」

TEXT：伊東孝晃