2024/9/18
インタビュー
――「夕」は、宅間さんが主宰した劇団・東京セレソンデラックスで2003年に初演され、劇団解散後、タクフェスでも上演し、再演を重ねてきた人気作品です。オファーを受けていかがでしたか。
「率直にめちゃくちゃうれしかったです。「夕」はもともと好きやったんですけど、またタクフェスに出られるというのもうれしかったです。「夕」は生では見たことがなかったんですけど、U-NEXTで出演が決まる前から拝見していて、すごく好きな作品でした。」
――稽古はまだ始まってないそうですが、宅間さんとは何かお話しされましたか。
「はい。2014年に上演された「夕」は、私が演じる信子役が南海キャンディーズのしずちゃん(山崎静代)だったんです。「タクフェスの信子より、東京セレソンデラックスの信子を参考にしたらいいんじゃない?」と宅間さんに言われて、両方見ました。セレソン時代の信子は、「Dr.スランプ アラレちゃん」のアラレちゃんみたいな大きな眼鏡をかけてそばかすがある。しずちゃんの信子とはビジュアルが違っていますが、信子としてのお芝居や演出は変わっていません。今回のホームページやチラシに載っている私の信子は、かわいい、アイドル風の盛れている信子なので(笑)、デカ眼鏡を付けたコミカル風になる可能性があります。」
――信子は、夕(矢島舞美)と夕の親友の薫(中村静香)の友達で、3人の女子高生トリオです。元弥(古屋敬多)になかなか思いを伝えられない控えめな夕に比べて、はっちゃけた役ですよね。
「めっちゃ自由な人やから、リラックスして稽古に臨めそうです。元弥をめぐって、夕と薫がライバルになったりするから、仲介じゃないですけど、3人娘のそのポジションを大事にしながら演じていきたいですね。」
――信子をどのように捉えていますか。
「結構、切ない物語なので、お客さんにクスッて笑ってもらえるような緩和剤に、切ないだけではなく笑えるという、笑いの部分に貢献したいと思います。また、物語が展開し、信子に子どもができたりしますが、過去の映像を見ると、強いお母さん・女性になっているのが伝わってきます。自由ではじけていて、面白い子なんですけど、少し周りを俯瞰して見ているところもある。」
――わちゃわちゃとしていて明るいだけではなく、後半では重要な役目を果たしますね。
「最後の方に夕に助言するシーンがあるんですけど、あんなに今までふざけてたのに、「そんなこと思ってたんや」というギャップのある子やなと思いました。」
――ヤンキーやおニャン子クラブなど、劇中には昭和のネタが満載です。
「テレビの懐かしい映像を番組で見ていました。劇中でよくネタになっている「笑っていいとも!」は80年代から放送されてたんや、長っ!と思いました(笑)。おニャン子クラブは音楽番組で知っていましたね。自分はまだ生まれてない時代ですが、頑張って落とし込めたらいいなと思っています。」
――例えば、キャラクターの名前が相川欣弥で、愛川欽也さんとケロンパが愛称のうつみ宮土理さんがネタにされていて(笑)、きっと昭和の世代にしか分からないんだろうなと思いました。
「愛川欽也さんは知ってはいるけど、リアルタイムではないですね。同じように出てくる「欽ちゃんの仮装大賞」は見ていたので分かりました。」
――三戸さんにとって昭和はちょっと遠い感じですか。
「そうですね。ラジカセで「笑っていいとも!」のオープニングナンバーの「ウキウキWATCHING」をカセットテープに録音するというセリフがあるんですが、ラジカセで録音できるんやと驚きました(笑)。」
――録音できるんですよ。私もやっていました(笑)。
「私もお姉ちゃんがやっていたような記憶があります。」
――最近、昭和ブームとも言われていますね。
「昭和のアイドルの衣装やメイクはめっちゃかわいいなと思います。特に中森明菜さんのメイクがかわいい。SNSで中森明菜さんのメイクをしてオマージュしたものをあげている人もいるんです。昔のアイドルは大人びた感じがして憧れですね。」
――3兄弟のヤンキーについてはなじみはないですよね(笑)。
「そうですね。私は奈良市出身なんですが、私の周りにヤンキーはいなかったです(笑)。いたかも知れないですけど、私の近くにはいなかったです。」
――三戸さん世代のツッパリはどこに行ったのですかね(笑)。
「分かんないです。過去の成人式の映像やアニメで見るぐらいで、こういうツッパリがいるんやと(笑)。」
――この作品で初めて出会うという感じですね。ところで、夕と元弥の関係はどう感じましたか。今の世代で、幼なじみで隣同士と距離も近いのに、長い年月をかけて、好きなのになかなか告白できないというのはあるのでしょうか。そういうのは昭和ならではなのかなと。
「今はSNSがあるので、物語のようにわざわざお隣さんの家まで行かなくても、簡単につながれる時代ですよね。やっぱり昭和ならではなのかなと思いますね。私は地元の奈良でもお隣さんとあんなに仲良しというのは経験したことがないので、憧れますね。キャラクターは皆、すごく距離が近くて、そこが田舎の良さなのかなと。夕と元弥はウブで、夕は気持ちをずっと伝えられないじゃないですか。「はよ、言ったらええのに」とずっと思っていたんですけど(笑)、映像を見るうちに、好きやからこそ言えないみたいのがあるんかなと思うようになりました。」
――今はSNSがあるからこうまではならないのでしょうかね。
「宅間さん世代は共感するから人気の作品なのかなと思いますね。私たちや20代のお客さんはどう思うのか気になりますし、反応が楽しみですね。」
――予想外のラストについてはどう思いましたか。
「「ええーーっ、嘘やん!」と思って。それが宅間さんの演出のすごいところなんだなと思います。最初のプロローグがあるからこそのあのギャップですよね。まんまと宅間さんに騙されて(笑)、宅間さんさすがやな、すごいなと思いました。泣くお客さんは多いでしょうね。」
――台本を読んでいるだけでもジワッときますね。
「「甘酸っぱい」とうたわれていますが、甘酸っぱいのを超える感じがありますよね。」
――苦いというか、ビタースイートというか。ところで、前回「ぴえろ」に出演されたのは、どういう経験でしたか。
「青春を感じました。共演者の鈴木紗理奈さんが「大人になってからこんな青春できるのはタクフェスぐらいやで!」と言われていて、それがめっちゃ分かるなという経験でした。宅間さんがお芝居だけではなく、役者としての立ち振る舞いも教えてくださった。「役者はちやほやされてたらダメ。お客さんやスタッフさんがあってこその役者やから」と言われて、自分自身も芸能生活をどうやっていくかの中で、定まったというか背筋が伸びる出来事でした。今回も楽しみですし、キャストは初めましての方が多いから、引っ張っていけるような存在になれたらいいなと思います。」
――どんなところが青春だったのですか。
「オフでは宅間さんが地方公演の合間に、皆で旅館に泊まりに行こうと誘ってくださって、プチ温泉旅行に行きました。今まで舞台のメンバーでここまで仲良くなることはなかったんです。稽古場でも皆熱くて、稽古が終わった後も、自主練したり。大人になってここまでしたことはなかったですね。」
――宅間さんは厳しいと、自他共に認めていますが、「僕が言っていることが厳しいんだとすれば、エンタメの世界が緩すぎる。このレベルで僕が求めていることを厳しいと断ずるなら、エンタメの世界はヤバい」とおっしゃっていました。
「宅間さんは厳しいと言われるけど、当たり前のことを言っているだけだと。この世界は一生懸命やるのが当たり前というか、厳しさの裏側には、お金払って時間を割いてもらう、お客さんのためというのがあるんです。」
――三戸さんは2018年から女優業を始められました。
「自分ができてないことや、見つめ直さなあかんことを、今もまだまだなんですけど、宅間さんが洗い直してくださった。できてない部分にいっぱい気づかせてもらったなと思います。」
――どのようなことですか。
「スタッフの裏方さんが頑張っているからこそ舞台に立てるというのは、分かっていたようで分かっていなかったんです。今は心の底から感謝していますし、いないとできないなと思います。例えば、宣伝の方が動いてくださっているから、今日もこうやってインタビューに答えられる。ふわっと思っていたことをしっかり見られるようになったなと思います。」
――身をもって宅間さんから教わったと。
「そうですね。また、お芝居は人間やからミスすることは当たり前。誰かがミスしたら、誰かがフォローする。それが当たり前だと。あまりそういう感覚がなかったんですよ。フォローするぞみたいに思って、舞台に立っていなかったから。」
――何より自分がミスしないかを考えますよね。
「相手のためにお芝居しろと。それを身をもって実感しました。」
――自分よりもまず相手ですね。最後に、本番に向けて一言お願いします。
「人気作品なので緊張しますが、チームワークを良くして本番に臨みたいです。公演は秋やけど、夏を、青春を感じてもらいに劇場に来ていただけたらうれしいです。」
取材・文:米満ゆう子
タクフェス第12弾公演『夕 -ゆう-』
■作・演出
宅間孝行
■出演
矢島舞美、古屋敬多(Lead) / 松本幸大、
中村静香、久保田秀敏、伊藤裕一、三戸なつめ
浜谷健司 / 廣瀬智紀、福冨タカラ、大薮丘、
吉田英成、吉川真世(劇団4ドル50セント) /
藤田朋子 / 宅間孝行
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2024/11/14(木)~2024/11/17(日)≪全4回≫
|会場|シアター・ドラマシティ
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