2024/5/21
インタビュー
――「Made in musicasa」について、コンセプトを教えてください。
「10年以上続けている企画ですが、毎回終わった後に『あ~おもしろかった!』と思ってもらえるようなコンサートにするよう心がけています。そもそもコンサートに来る人たちは、普段はお仕事や家事をしていて、日常の中でモヤモヤすることがあったり、ストレスを抱えていたりする人もいると思うのですが、それを発散してもらい非日常を感じていただけたらと思っているんです。プログラムを決めるときもそれを意識していて、前半はアコースティックな楽器でホールの雰囲気をほぐし、後半はバンド編成でガーっと音を鳴らす。そして最後はすっきり笑顔になってもらえたらいいなと」
――チェロは普段、クラシックで演奏されることの多い楽器ですが、柏木さんはクラシックだけでなくさまざまなジャンルや編成で演奏されています。元々はクラシックから音楽の世界に入ったのでしょうか?
「東京藝術大学ではクラシックを中心に学んでいましたね。元々3歳からピアノを習っていたのですが、母が先生だったのでそれにどうしても馴染めず、『ピアノをやめたい。代わりに何でも楽器をやります』と説得したら、チェロを勧められて。弾いてみると、子どもながらにしっくりくる感覚があったのを覚えています。大学ではクラシックをやりつつ、ロマ(ジプシー)の民族音楽にハマったり、仲間と組んでいたインストゥルメンタルバンド『G-CLEF』でデビューしたり、20代でブラジル音楽に出会ったり…。いろんな音楽や人との出会いで、今の活動につながっているので、その感謝を還元するのがこのコンサートだとも思っています」
――クラシックだけでなく、民族的な音楽やポピュラーミュージックまでさまざまな音楽を演奏していますが、最も大切にしている音楽はありますか。
「やはりクラシックとブラジル音楽の2つが自分の中の柱になっています。ブラジル音楽には、チェロの居場所があると思っていて。それらに影響を受けていることはもちろんなのですが、他にもたくさんの楽器やパフォーマンスとコラボしてきました。今回はアボリジニ発祥の楽器であるディジリドゥが参加しますし、過去にはタップダンサーとのコラボもありました。僕のスタンスとしては、そこにおもしろい音があれば一緒にやりたい。逆に聞きたいのですが、チェロと合わない楽器ってあるのでしょうか(笑)。そもそも僕は、チェロという楽器が好きなんですよね。どんな音楽でも、まずはチェロの音色を最大限に鳴らす。それを意識しています」
――共演するメンバーの皆さんも多様です。
「はい。僕はいつもコンサートでは、何より参加しているメンバーのこともフィーチャリングしたいと思っています。
まずピアニストの健ちゃん(光田健一)は、これまでデュオ企画も多くやってきた盟友です。彼は何でもない日常をファンタジーにしてくれるようなミュージシャンですね。ギタリストの天野清継さんは、澱みのない人。まるでしゃべっているかのようにギターを弾ける人で、こんなふうに楽器ができたらいいだろうなと思いますね。ベーシストのコモブチキイチロウさんは、僕が弱っていたらいつも背中を押してくれる存在で、僕はコモブキさんのベースの音が世界で一番好きなんです。ドラムの齋藤たかしさんは一番若手だからイジられキャラでもあり(笑)、いつもハッピーな音を叩く人です。
そしてフルートとサックス、ディジリドゥを吹くアンディ・ベヴァンはおそらく10年ぶりの共演です。ディジリドゥは低音でブーっと鳴らす楽器なのですが、それで16ビートのようなリズムも吹いてくれる。包容力のあるプレーで、もちろんフルートとサックスの音も素敵なのですが、とにかく彼と一緒にやると信じられないことが起きる。そんな存在です」
――ライブにはどんな方に来てほしいですか。
「僕はやっぱりライブが一番好きです。もちろんレコーディングも大切なのですが、ライブでは自分の音色がきれいにパッケージされることなく、傷があってもそこには勢いがある。今回は特に、チェロの音色を聴いたことのない人に来ていただきたいですね。チェロを堅苦しい楽器と思わず、ライブならではの現場の空気の中で、その音色を味わってみてほしいです」
取材・文=桒田萌
柏木広樹 チェロ・コンサート
“Made in musicasa 2024”
■出演
柏木広樹 (Vc)
光田健一 (Pf,Key)、天野清継 (Gt)、
コモブチキイチロウ (Bs)、齋藤たかし (Ds)
アンディ・ベヴァン (Didjeridoo,Sax,Fl)
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2024/07/21(日) 16:00開場/16:30開演
|会場|松下IMPホール
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