2024/5/8
インタビュー
――5年ぶりの上演ですが、NY公演が決まった経緯と今のお気持ちは?
「そもそも私が還暦の記念に三谷さんにお祝いで作っていただいたんですけど、初演は台本が本番の6日前に出来上がってきて、四苦八苦の状況でした。で、リベンジということで翌年に再演させていただいた時、たまたまお客様で私のお友達のお知り合いにカーネギーの関係者の方がいらして『これ、カーネギーでどうですか』と言われたのが始まりで。大ホールではなく、私の身の丈にあったサイズの小ホールです。お話を進めていただき、いよいよGOという時にコロナ禍になり、NYもすべて劇場が閉鎖になって。で、立ち消えになったなと思っていたら去年の初めに『そろそろどうですか』って、あわてて準備に取り掛かって今に至るという。消えずにいてくれたのは、ご縁があったと言う風に思いたいですし、何よりもNYでできるなんて、これまで一度も思ったことがないこと。それが実現できるのは、長年頑張って来たご褒美、与えていただいたプレゼントだと思って、バンド3人のみんなと頑張ってエンジョイしようという感じで、ワクワクしています」
――『虹のかけら~もうひとりのジュディ』の始まりは?
「私は今まで誕生日は感謝の気持ちを表すようなことをしたいと、30歳、40歳みたいな節目節目で大抵はコンサートをやって来ました。60歳の時もコンサートのつもりだったんですが、自分の年齢のことも考えて、何か印象に残るお芝居で記念の公演をしたいなと思って。で、前に私がブロードウェイで観た『レディ・ディ』という、語りと歌だけの素晴らしいショーのイメージで、還暦記念にと三谷さんにご相談したんです。いろいろなジャンルの持ち歌をたくさんお持ちのアーティストの激動の人生を1人でやれるショーが作りたいと。笠置シズ子さんとか何人か名前を出させていただいた時に、三谷さんが『チョイスは僕に任せてもらっていいですか』と。で、『お任せします』と言ったら、題材がジュディ・ガーランドで。まさか海外の人とは思っていなくてびっくりしました。でも、私が大好きな女優さんで、そんな偉大な人のお話ができるのはすごく光栄だなと」
――作品の魅力を教えてください。
「舞台は、同じ名前で付き人になるジュディ・シルバーマンの日記から、ジュディのことが書かれた部分を抜粋してリーディングしていく形です。ただ単にジュディ・ガーランドを演じるのではなく、一番近くにいたもうひとりのジュディの嫉妬など私情もはさんだ目線から、彼女を切り取って描いていく。その構成が三谷さんらしく、とても素晴らしくておもしろいなぁと。あと“オーバー・ザ・レインボウ”はもちろん、ジャズナンバーもたくさん歌ってらっしゃるジュディの歌も歌います。その素晴らしい曲を10曲ぐらい盛り込んで、47歳で亡くなった彼女の波乱万丈の一生を1時間半ぐらいのショーで駆け抜けていく感じのお芝居です。ほとんどの方が知らないことを語っていくので、一人の人生を短い時間で皆さんと共有できたらと思っています」
――ミヤコ蝶々さんを描いた『なにわバタフライ』とは違う、新しい一人芝居ですね。
「『なにわバタフライ』の時、三谷さんに『1人ではしたくない』とずっと言っていたのに、ふたを開けたら一人芝居になっていて(笑)。私は誰かとセリフを交わすことが好きで、みんなと一緒にお芝居するのが楽しくて女優をやっているので、最低でも2人ぐらいで、と。でも今回、仲の良い役者さんたちを集めて、という可能性もありましたが、みなさんのスケジュールを押さえることは大変だし、誰にも迷惑をかけないでやるにはやっぱり1人しかないなと。だけど今回はバンドがいるので、1人感はかなり少ないですね。歌えることもプラス要素ですし。1人のショーですが、私はライブの仕事もやっているので類似する感覚もありまして。不安ごとは、年を取ったので体調面ぐらい。今回は楽しもうという気持ちが今のところ一番です。ホール事情もスタッフも海外なのに短期間の勝負という感じですが、いろいろなアクシデントがあっても、それを楽しんでいこうと思っています」
――カーネギー・ワイル・リサイタルホール用に、今回どのようにリメイクを?
「三谷さんを交えてみんなで何回かミーティングをして、これからリメイク作業に取り掛かろうと。これまでのようにジュディ・ガーランドが愛したナンバーを入れ込んでストーリーも曲目も変えず、日本で作ったものを持って行きます。ただ、カーネギーはシアターでなく基本コンサートホールで厳しい規約もたくさんあり、狭い舞台のスペースをどう使うか、今工夫しているところです。最低限使える道具だけでシンプルにして、よりおもしろくなるアイデアを出し合っていますが、やっぱり三谷さん、私たちと考えることが違う。一癖ありますね(笑)、そこが楽しいです。三谷さんにはいつも私が出来る範囲以上のことを引き出してもらっていて、いつもおもしろい発見があり、わくわくします」
――音楽監督とピアノ演奏の荻野清子さんたち女性3人の生バンドも変わらずに?
「はい、歌の演奏や効果音とかいろいろ参加してもらいます。あと、せっかくカーネギーホールでやるので、歌わずにインストゥルメンタルでバンド演奏だけの音もみなさんに聴いてもらいたいと思って、私からリクエストしています。それもジュディがらみの曲をチョイスしてほしいと」
――この作品から伝えたいことは?
「観た方それぞれの思いがあると思いますが…亡くなり方は悲惨ではありますが、私はジュディ・ガーランドの人生を讃えたいと思ってやっています。最後の曲は“サニーサイド・オブ・ザ・ストリート”という有名なジャズソングで、これは、絶対に前を向いて歩いて行こうという歌なので」
――公演を楽しみにしているみなさんへメッセージを。
「今回は少し大人のショーにできたら、と思っています。私がインスパイアされた、道具が一切なくてもあんなにシンプルで素敵な一人のショーが出来たらいいなと思った舞台に近づくかなという気持ちもあります。ほんとはもう少し早くやる気持ちだったので、その分、ちょっと歳を重ねてしまった事実は否めないんですが、だからこそチャレンジしがいがあるなと思っています。カーネギーホールの楽屋口には一番手前のところにジュディ・ガーランドの白黒写真が飾ってあるんですよね。小ホールとは言え、そこでジュディ・ガーランドの一生を語れるという、もう2度とないと思う喜びがあります。それを踏まえて、みなさんにお届けできるのは特別なこと。そういうものも絡め、ジュディ・ガーランドをよく知らない人でも楽しめる作品になっているので、みなさんに期待していただきたいと思います」
取材・文/高橋晴代
ヘアメイク/相場広美〔MARVEE〕
スタイリスト/江島モモ
衣装協力/
「虹のかけら ~もうひとりのジュディ」
■構成・演出
三谷幸喜
■音楽監督
荻野清子
■振付・ステージング
本間憲一
■出演
戸田恵子
■演奏
ピアノ:荻野清子
ドラム:BUN Imai
ベース:鈴木陽子
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|日時|2024/07/05(金) 18:00
2024/07/06(土) 13:00
2024/07/07(日) 13:00
|会場|COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
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