2024/4/10
インタビュー
――2022年の11月に約6年ぶりの国内有観客ライブを行い、翌年のツアーがキャリア初のワンマンライブツアーというのは意外でした。
Tom-H@ck「それまでは、ほぼほぼ海外のライブに出演していましたね」
KIHOW「コロナ禍の影響もあって海外になかなか行けなくなり、リリースのスケジュールなど色々なことが変わっていきました。その中で、『日本国内での活動をもっと増やしたいね』となり、まずはワンマンライブ、その追加公演としてツアーも決定した感じですね」
――国内ツアーを行ったことで、いい変化や影響はありましたか?
KIHOW「初めてしっかりとバンドメンバーと一緒に合わせて作っていったんですけど、今まで音源をバックにやっていたことも多かったので、『バンドがいると、こういう音が格好良いね』という新たな発見がありました。前作の『AZUL』ではそういうバンドサウンドの曲を作ろう、と」
――その前作の『AZUL』と今作『VERDE』は2枚連作の初のコンセプトミニアルバムになっているとのこと。連作で出そうと思ったきっかけを教えてください。
Tom-H@ck「僕は、B’zさんの金銀アルバム(『B'z The Best "Pleasure"』『B'z The Best "Treasure"』)とか、L'Arc~en~Cielさんの3枚同時シングルリリース(『HONEY』『花葬』『浸食-lose control-』)が青春時代だったので、このタイミングでそういうB’zさんの金銀みたいなアルバムをMYTH & ROIDでやったらすごく面白いんじゃないかなというシンプルな発想からアイデアの芽が出て、そこからどんどん膨らませてこの2つの作品になりました」
――2作を通して『彫刻をめぐる物語』を軸に人の営みと感情を描いたオリジナルストーリーが描かれています。このコンセプトに至ったのは?
Tom-H@ck「もう一人、hotaruというコンセプトや歌詞を考えるメンバーがいるんですよ。僕が最初に、現代社会における問題提起みたいなものを僕たちなりの言葉で芸術的表現のもと発信したいって言って、それを受けてhotaruが像の話や生まれ変わりなど神秘的な要素を加えながら作っていきました」
KIHOW「MYTH & ROIDは創設時から“感情の最果て”をテーマにしているんですね。今回は壮大なお話を『AZUL』と『VERDE』という2つに分けているんですけど、そのファンタジックなお話の中には私たちが日常で感じるようなリアルな気持ちがすごく並んでいるので、楽曲を順番に聴くだけで1つの人生で感じられるような感情を網羅できる要素があると思っています」
――ミニアルバムではありますが、感情を表すように楽曲の振り幅も広いですよね。
Tom-H@ck「僕は音楽作家として先にデビューしたこともあり、様々な音楽ジャンルを1回はおさらいするのが習慣づいてるので、それが自然と出たのかもしれません。それから、何か問題提起のような表現をする時に1つのジャンルだと面白くないなと思って。今回、『RESIST-IST』っていう曲があるんですけど、この曲では“集団がこうだと言っていることが全部正しいわけじゃない。真実はどこかに隠れているから、みんな見定めろよ”ということを結構強めに伝えているんですよ。こういうのを表現するときに両極端な音楽ジャンルを混在させることで、やりたいことをストレートに出せたような気がします」
――この作品を通じてどんなことを感じてほしいですか?
KIHOW「全曲違うことについて歌っているんですけど、“自分の思っていることを信じて、前に進んでいってほしい”というメッセージは一貫してあって。『VERDE』はもちろん、それ以外の作品のほとんどで言っているんじゃないかっていうくらい。私たちが今まで曲を通してずっと伝えてきていることなので、そこを感じてほしいなと思います。人それぞれいろんな形の人生があって、楽しいことも大変なこともあって、うまくいかない時もあると思うんですけど、そういった時に私たちの曲を聴いて、とにかく自分自身を奮い立たせてほしいという気持ちがすごく強いです」
Tom-H@ck「“自分で道を切り拓いていこうぜ”みたいなね。死にたくなるくらい辛いことって人生で1度、2度あると思うけど、それでもやっぱり生きていかなくちゃいけないっていうところで、僕たちの曲で鼓舞したいというか。KIHOWちゃんが言っていた“感情の最果て”、楽しいの最上級や怒りの最上級だとか、いろいろな感情の最上級を描きたいっていうのが僕たちのコンセプトにあって。人間って結局は感情の生き物かなと思っていて、その感情をドラマチックかつ現実的に捉えて作品を作っているので、僕たちの曲を次へと踏み出す一歩、踏み出す力にしていただけたらありがたいなと思っています」
――その楽曲を生で聴ける、『VERDE』をライブで楽しめるツアーも決まっています。
KIHOW「ライブ自体もそうですけど、『VERDE』の世界観をライブ会場に入った時から感じられるような演出など、全体を通して『VERDE』の空気感を楽しみながら、かつ私たちの持っている魅力を最大に感じられるような場にできたらいいなと思っています」
――音源ももちろん素晴らしいのですが、ライブでしか味わえない魅力がありますよね。
KIHOW「そうですね。音源を聴いていただけるのはもちろん嬉しいんですけど、ライブではバンドがいて、その音を生かして作りこんだ良い状態のものを皆さんに聴いていただけたらと思っています。自分で言うのも恐縮ですけど、やっぱり生で聴けるっていうのはすごく良いだろうなと思っていますし、今、自信を持ってライブをしているのでぜひ来て頂きたいです」
――ちなみに、ライブで印象が変わりそうな楽曲はありますか?
Tom-H@ck「『Dizzy,Giddy』とかかなぁ。バンドでやるとまた違う感じになるのかなと思います。あと『Whiter-than-white』。これも音源ではバンドが入っていなくて、オーケストラとピアノとシンセしか鳴っていないので、これをどうバンドで表現しようかなと。曲の持つ神秘的な感じはやっぱり表現しないといけないので」
――では改めてライブに向けた意気込みを聞かせてください。
KIHOW「今、結構なスパンでライブをやっていて、その中で急激に自分たちが変化しているのを感じているので、前回の『AZUL』ツアーからまた雰囲気が変わったなと思ってもらえるかなと。初めてのツアー、そして前回のツアーと変わり続けているので、また今回も一段違う人間に自分が変わっていくんだろうなと。そういうところも皆さんに見届けていただきたいですね。早く来ないと貫禄がすごくなっちゃうから、って思っています(笑)」
――変化を見られるのも楽しみの1つですね!
KIHOW「そうだと思います。1つのツアーの中でも最初とファイナルでは変化があったりするので、そういうところも楽しんで、自分たちが変わっていくところを見ていただけたらなと思います。今後もMYTH & ROIDについて行きたいなと思ってもらえるような音楽やライブを作るので、ぜひ観に来て頂きたいです」
TEXT:金子 裕希