2024/1/16
インタビュー
――脚本を読んだ率直な感想を教えてください。
和田「正直なところ、最初は理解できないところもありました。かなり早い時期に脚本をいただいたので、それから何回も読んで、本読みのときにはほとんどのセリフが入っている状態だったのですが、実際に本読みをしてようやく自分の中に入ってきたなと感じました。台本を自分で読んでいるときと、皆さんの声で聞くのでは全く違う感覚があったので。とにかく美しい作品だなというのが第一印象です。」
崎山「小説のようだし、絵本のようだし、戯曲的なギリシャ神話でもある。様々な要素が詰まっているけれども現代に通じるものもある。自分の役がどうというよりも、気付いたらオルフェやエウリディケの目線で読んでいて、どんどん吸い込まれていくような感覚がありました。」
――お二人が演じる役の印象は?
和田「オルフェは全てが音楽でできている人間なので、例えば、恋人と会話しているときも自分の中には音楽がずっと流れていて、メロディーを奏でている。今、相手の感情はどのようなメロディーなんだろう。今の自分の感情はどういうメロディーなんだろうとずっと考えています。もちろん、エウリディケのことは愛していますが、それと同時に音楽が大きな存在として心の中にある。とにかく“音楽”の印象が強い人物だと感じ、今はそれを意識しながら僕も生きています。」
――演出の白井さんからは、どんな言葉がありましたか?
和田「「和田くんから生まれてくるものでいい」と言っていただきました。この年代の人を生きようとするのではなく、現代を生きている自分たちのままでいい。例えば、1950年代の、おじいちゃんやおばあちゃんの服を引っ張り出して着ている今の子たちのようなイメージです。ギリシャ神話の時代を生きようとするのではなく、ただ等身大の自分たちで、その時々の心情を自分の中の引き出しから出して演じるという感じです。もし、その心情が引き出しにないならば、そのときに生めばいいと。」
――なるほど。崎山さんは、今回、危険でおもしろい男と地下の国の王の2役を演じます。
和田「危険でおもしろい男、良い役名ですよね(笑)。」
崎山「初めてですね、名前じゃないのは。幼稚園の頃の「小人B役」以来かな(笑)。でも、難しい役だと思います。何をもって危険とするか、何をもっておもしろいとするかを求められているのかなと。白井さんが、「例えば、切ないシーンで切ない音楽が流れるよりも、激しい曲が流れた方がより切なく感じる」とおっしゃっていたのですが、そういうことなのかなとも今は感じています。サラ・ルールの詩的な部分を言葉で表現すると「危険でおもしろい男」になるのかなと。本来、ギリシャ神話では、エウリディケはヘビにかまれて死んでしまうんですよ。ですが、この作品ではそうした描写はない。それは、僕がヘビになる瞬間があるのかもしれないし、逆にヘビを見つけて助けようとしたのかもしれないし、色々な解釈ができるということでもあります。今はまだ稽古をしている最中なので、やっていくうちに変わっていくところも、見えてくるものもあると思いますが。」
――地下の国の王についてはいかがですか?
崎山「地下の国の王は、まだ稽古でやっていないので、想像できていません。もちろん、自分なりにこうしようというものはあるのですが、それが白井さんのイメージと合致するのかはまだなんとも…。ト書きに「三輪車に乗ってくる」とか、「身長が3メートルある」と書いてあるんですよ。身長3メートルか…シリコン入れた方がいいかなって(笑)。」
和田「つばさはいけるタイプだもんね。2メートル50センチまではやったことあるもんね(笑)?」
崎山「そうそう(笑)。でも、これは演劇なので、見せ方はいくらでもあるじゃないですか。なので、たくさんチャレンジをして見つけていきたいと思います。」
――すでに稽古が始まっているということで、和田さんは初めて白井さんの演出を受ける上で、どんな心構えで臨まれていますか?
和田「構え過ぎずにいこうと思っています。もともと、白井さんとご一緒できると思ったことがこの作品に出演する決め手だったこともありますし、多くの方から評価されている演出家の方でもありますが、大谷翔平選手の言葉にあったように「憧れるのをやめましょう」と。憧れて、すごい人だと思うと萎縮してしまいますが、同じ作品を作る仲間ですし、これまでと同様に演出家さんと役者たちのぶつかり合いはどこの現場も一緒だと思うので、白井さんだからということは考えずにぶつかっていきたいと思います。分からないことは積極的に質問していきたいとですし、構えずにいきたいと思います。」
――崎山さんは『サンソン‐ルイ16世の首を刎ねた男‐』で白井さんとご一緒していますが、そのときの白井さんの演出の印象を教えてください。
崎山「本番に入っても稽古しているかのような熱量を持った現場でした。僕もそれに応えたいと思いましたし、そう思わせてくれる方だと感じました。足の先から頭まで、体全てを研ぎ澄ませて作品作りをしたことを覚えています。僕たち若手は、歩き方の稽古からスタートしたのですが、そうした経験はなかなかできないと思います。どこまで表現できるのか、その可能性を本番が始まってもまだ突き詰めようとするという姿勢を教えていただきました。」
――千穐楽まで白井さんの演出が入るそうですね。
崎山「そうなんですよ。(『サンソン‐ルイ16世の首を刎ねた男‐』に出演していた)佐藤寛太は自分から「ありますか?」と聞いて、しっかりもらっていました(笑)。」
――そうした白井さんの演出を受けて、今までのやり方と違うと感じるのはどんなところですか?
和田「僕は初めて白井さんの演出を受けていますが、まず、稽古期間が長い。トライ&エラー以上のことをやっているという感覚があります。舞台の稽古では、いわゆる出ハケ(舞台に登場する、舞台から袖に消える)やミザンス(立ち位置)を最後までつけてから、それぞれのシーンを色濃くしていくというのが一般的だと思いますが、白井さんの場合、「今日はこのシーンをやります」と言ってそのシーンを稽古したら、最後に全て稽古してきたことをゼロにするんですよ。それで、エチュード(即興劇)として、自分が動きたいように一度演じてみる。そうして、「そのエネルギーが良いから、これで」と言って終わるんですが、じゃあ、今日は僕はどれを持って帰ったらいいんだろうと(笑)。きっと、そうした稽古が最後まで続いていくと思うのですが、そこで生まれたものは(稽古前とは)全く違うものになっていると感じています。白井さんは、動きよりも心情を大切にされる方なので、気を抜いた瞬間を見逃してくれないんですよ。最初からトップスピードで演出してくださる。そのおかげで、僕たちは役に寄り添えば寄り添うほど深くなっていくと思うので、本当にありがたく思っています。」
崎山「稽古場で栗原英雄さんと、良い意味で「白井晃の後には“めない”が付く」という話になったことがあります。“晃(あきら)めない”。本当にその通りだと思います。初めてご一緒したときも今もそうですが、ずっとその作品や役のことを考えていらっしゃる方なんですよ。稽古でも「横で使っていたものを今度は縦にしてみよう」という感じで、出来上がったものをまた壊して、視点を変えてまた違うものにトライしてみる。これでオッケーではなく、その先に何があるのか。どう崩していけるのかを、常に考えているのだと思います。すごく時間がかかる作業で、体力も精神力も使いますが、その分、練られて強固になり、作品の深さが増すのを感じます。」
――では、これまでも共演経験の多いお二人ですが、お互いに俳優としての魅力をどこに感じていますか?
和田「うーん、難しい(笑)。」
崎山「10個言って(笑)。」
和田「顔が良い(笑)。」
崎山「あはは、ビジュアルかい!(笑)。」
和田「つばさくんは本当に稽古が好きなんだなと今回、特に感じています。稽古に向けた時間が長かろうが、何も苦ではない。それは、舞台役者にとってはすごく必要な才能だと思います。「今日はちょっと疲れてるから早く終わりたいな」というのがないんですよ。「ここどうしたらいいですか? 何時になってもいいのでやってください」と。その才能は本当にすごいなと思いながら見ています。別に、僕にそれがないわけじゃないんですが(笑)。僕も稽古はしたい人ですよ。それはちゃんと書いておいてください(笑)。」
――崎山さんはいかがですか?
崎山「これまでも共演はしていますが、こうしてがっつり作品のことを話し合える機会は初めてなので、今回は少人数の舞台だからこそ、熱い演劇の話をしていきたいと思っています。嫌だなと思われたり、しつこいなと思われてもやろうと思ってます。」
和田「思わないよ(笑)。」
舞台『エウリディケ』
■出演
水嶋凜 和田雅成
櫻井章喜 有川マコト 斉藤 悠
崎山つばさ 栗原英雄
■演奏
林正樹(ピアノ) 藤本一馬(ギター)
■作
サラ・ルール
■演出
白井晃
■翻訳
小宮山智津子
■音楽
林 正樹
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|日時|2024/02/24(土)~2024/02/25(日)≪全3回≫
|会場|シアター・ドラマシティ
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