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【インタビュー】NODA・MAP第26回公演 『兎、波を走る』高橋一生

2023/7/13

インタビュー

NODA・MAP第26回公演 『兎、波を走る』

“兎”となって舞台を駆け回る姿が新鮮!
高橋一生という俳優の真髄を観る喜び

近年は主演ドラマや映画でその姿を観ることが多い高橋一生が、野田秀樹が作・演出するNODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』で大阪に登場する。NODA・MAPには、初参加した2021年の『フェイクスピア』に続いての出演。映像において繊細で緻密な芝居でその世界に連れていってくれる俳優は、めまぐるしく展開していく野田の世界をどう体現していくのか。野田も絶賛する表現の奥にある、俳優としての思いを語ってもらった。

【初NODA・MAPから2年で再び】

2021年の『フェイクスピア』で初めてNODA・MAPに参加した。「とにかく楽しかったという記憶しかありません。自分が今までやってきたことを、大きく変えることも抑え込むことなく、そのまま拡大してできた感覚が楽しかったのかもしれないです。身体が自由に動いて、いろんな枠を取っ払ってお芝居ができていた気がします」。それからときを置かずに再び野田秀樹からオファーがあり、『兎、波を走る』に出演。「野田さんとまたご一緒できることがまずうれしかったです。以前から野田さんのお芝居を観ていて、こんなに肉体が弾けられたら面白いだろうなと思っていた自分からすると夢のような話で、感慨深いです」。

 
【野田秀樹からの称賛】

『フェイクスピア』の後、野田も高橋を称賛。身体能力の高さや声の良さ、作為的ではない芝居などを褒める発言をしている。「自分が俳優としてできることは何かと考えたときに、自分の外側も内側も含めて全部で、きっとこういうことをやるべきなんだろうな、やりたいなと思っていたことを、『フェイクスピア』ではすべて投入することができました。それを評価していただき褒めていただけたのは、単純にうれしかったです」。

 
【自分の強みの活かし方】

野田も褒めた自身の強みを、『兎、波を走る』ではどう使うのか。「本当は、自分の“ひみつ道具”的なものはあまり出したくなくて、なんなら最後まで出さないで終わりたいんです。けれど、野田さんの作品は、出さざるを得ないときがあって。しかも野田さんは、これはわかってもらえないだろうなと思うような隠し玉もことごとくキャッチして、「それこっちの場面で使えないかな」などと言ってくださるので、そこもキャッチしてくれるんだとうれしくなりますし、もっとお芝居をやりたいという気持ちになる。さらには、その隠し玉をあまり目立たない形にしてくれるのが素敵だなと思うんです。あくまで作品を重視して、そこに俳優をツールとして使ってくださっている。僕自身も、自分が表立つのではなく、自分を作品に還元できるのが一番だと思っているので。NODA・MAPの作品は、そういう作劇しているからこその力を持っていて、とても信頼できるなと思っています。

 
【『兎、波を走る』とは──!?】

作品の内容として発表されているのは、「潰れかかった遊園地を舞台に繰り広げられる劇中劇(ショー)のようなもので、世界的な劇作家まがいの人間が絡んでくる」というもの。そこに、多部未華子扮するアリスや高橋の兎が登場し、やがて、表層とは違う思いがけない世界を見せていく。「そこに現れたものを受け取ったときにどう感じるのか。それは本当に人それぞれで、十人十色すぎて想像がつかないというのが正直なところです。ただ、野田さんはきっと、作品として残す意義を強く感じていらっしゃるんだろうなと思いますし、そこに俳優として使っていただけるのはとても光栄なことだと感じています。娯楽として、虚実ないまぜに描いていくわけですから、見えるものは少なくなるとは思うのですが。でも、僕らが実の部分をしっかりと構築することによって、虚の部分も真に迫っていく。それは、『フェイクスピア』で日航機墜落事故を描いたときに体験していますから、今回も同じようなことが起こっても不思議ではないと思っています」。

 
【演劇だからできること】

「野田さんの作品ならではの、虚実の薄膜のところでお芝居できるのは、自分にとっては楽しいこと」だと、本当に楽しそうに語る高橋。「そもそもお芝居というのは作りもの。虚なわけです。そして、観ている方もこれは嘘だとわかっているのに、泣いたり感動されたりしている。説明できないけれど面白かったとか息が詰まったとか感じてくださっている。不思議なことですが、娯楽はすごい力を持っているなと思うんです。そして、この虚から自分に人生の実に立ち戻ったときにどんな感覚になるのか。とくに今回の作品は、その虚実に翻弄される感じが大きいと思いますし、それは演劇でないとできないことですから。その感覚をただ楽しんでいただければいいのではないかなと思います」。

 
【性に合う】

ドラマや映画で大忙しのなか、2020年からは毎年一度は舞台に立っている。「たまたまそうなっただけで意図的なものがあるわけではありません。でも、『フェイクスピア』をやらせてもらっている最中から、『舞台は自分の性に合っているんだろうな』と思ってはいました。自分の芝居の本質的なものを見てくれる人がそばにいて、忖度なしに意見が言い合えて、一緒にものを作っていけるほうが、僕はのびのびできる。だから舞台をやっているこの3年は、自分はとても芝居をやりたい人間なんだということを認識した時間だったかもしれないです」。

 
【大阪公演】

「大阪の人はとくに笑いに関しては厳しいという噂が、まことしやかに聞こえてきたりしますが、『フェイクスピア』のときも、東京の芝居だからと斜に構えたふうもなく、笑えるところは笑ってくださったので、とてもありがたかったです。正直、純粋にその世界に没入してくださっているなというのは、東京以外のお客様のほうが強く感じるんです。これまで通り肩肘張らずにご覧いただいて、その場を楽しんでいただければ何よりです」。

 

NODA・MAP第26回公演
『兎、波を走る』

■作・演出
野田秀樹

■出演
高橋一生 松たか子 多部未華子
秋山菜津子 大倉孝二 大鶴佐助 
山崎一 野田秀樹

秋山遊楽 石川詩織 織田圭祐 貝ヶ石奈美 上村聡 白倉裕二
代田正彦 竹本智香子 谷村実紀 間瀬奈都美 松本誠 的場祐太
水口早香 茂手木桜子 森田真和 柳生拓哉 李そじん 六川裕史
菊沢将憲(スウィング) 近藤彩香(スウィング)

大阪公演

|日時|2023/08/03(木)~2023/08/13(日)≪全13回≫
|会場|新歌舞伎座

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