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Musical『GYPSY』観劇レポート

2023/4/21

公演レポ

Musical『GYPSY』

大竹しのぶを主演に迎え日本で32年ぶりに上演

1959年にブロードウェイで初演され、数々の名優によって上演され続けてきた傑作ミュージカル『GYPSY』。実在したストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの回顧録をもとにしたミュージカルで、32年ぶりとなる今回の日本上演では、主人公のローズを大竹しのぶが演じている。東京公演は4月9日に開幕。続いて5月に大阪、愛知、福岡でも上演される。

ふたりの娘ルイーズとジューンをヴォードヴィルのスターにするため、ステージママとして日々奔走するローズ。そんな生活の中で出会ったハービーと共に、妹のジューンを中心とした一座を結成。ある日、大きなチャンスが舞い込むも、自分のわがままを押し通そうとするローズによって、すべてが白紙になってしまう。さらに一座の顔であったジューンが、座員のタルサと駆け落ちをして……。

ショービジネスに執着する最強のステージママ

約3時間の上演時間を引っ張り続けるのは、ローズという女性の圧倒的なパワー。とにかく娘を売り出したい。そのためには手段は選ばず、当の娘たちに教育も受けさせず、時と場合により年齢すら偽らせる。決して親として褒められた人物ではないが、なぜか愛嬌があり憎めない。それはローズ演じる大竹自身の豊かな人間力、そしてショービジネスへの溢れる愛が、ローズを単なる嫌味なステージママではなく、強烈だがチャーミングな女性へと昇華させているからだろう。

さらにローズがすごいのは、どんな逆境であっても常に前を向き、進み続けることだ。もちろんそれに巻き込まれるのはいつでも身近な人たちで、妹のジューンはそんな母との別れを決断。だが姉のルイーズは母を見捨てず、ついにはジプシー・ローズ・リーとして、“バーレスクの女王”と称されるまでに昇りつめる。同時にそれは子の成長を認められない親と、親の束縛を受け入れ続ける子という、共依存関係の崩壊をも意味する。叶わぬ自分の夢を子に託してきたローズにとって、それは受け入れ難い現実だろう。しかし名曲『ローズの出番』による幕切れは、不思議な希望に満ちている。なぜならそこにはお互いもたれ合い、なんとか立っていた親子の姿はなく、自分を武器にショービジネスの世界で生きることを決めた、ふたりの輝く女性がいるからだ。

ローズの熱量をそのまま曲に乗せたような大竹の歌声

大竹のローズはまさにはまり役。前述の通り彼女自身が役に滲み、ローズという女性を何倍も魅力あるものにしている。なにより圧巻はその歌声。言葉では表現出来ないほどの強い想いが、そのまま歌になっており、それゆえ観客の心に真っ直ぐ届く。ルイーズ役の生田絵梨花は、幼虫からさなぎ、そしてジプシー・ローズ・リーという蝶へと成長していくさまを繊細に表現。陰の存在であった少女が、スポットライトを浴びる大人の女性へ。役を通して、生田絵梨花という俳優の成長をも感じさせるようだ。

ローズを愛し、一座のエージェントも担うハービー役には、ベテランの今井清隆。さすがの存在感ながら、献身的にローズを支える姿は微笑ましく、またかわいらしくもある。さらに光る存在感を残すのが、ジューン役の熊谷彩春と、タルサ役の佐々木大光(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)。熊谷は歌声、ダンス、すべてにおいて華があり、一座のスターという役どころがまさにぴったり。佐々木はソロナンバー『彼女さえいれば』でキレのあるダンスを披露。舞台上のルイーズだけでなく、すべての観客を魅了した。

スターになれるのは選ばれたひと握りの人間だけ。そういった意味で、ローズに共感する観客も多いだろう。だからこそローズが発する前向きな力は、観客にも伝わり、劇場をあとにするその足取りをふと軽くしてくれているはずだ。

取材・文:野上瑠美子
撮影:田中亜紀

  

Musical『GYPSY』

■出演
大竹しのぶ
生田絵梨花
熊谷彩春 佐々木大光(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)
今井清隆

鳥居かほり 麻生かほ里 咲良
石田圭祐 泉拓真 安福毅

出津玲奈 岩崎ルリ子 江村美咲
砂塚健斗 高瀬育海 山田裕美子 横田剛基
スウィング:植村理乃 安井聡

大久保実生 久住星空 古閑暁奈
酒井希愛 中村環菜 三浦あかり
入内島悠平 占部智輝 黒岩竜乃介 櫻井碧人
立花優愛 鳴海竜明 前田晴秋 涌澤昊生

■スタッフ
作詞:スティーヴン・ソンドハイム
作曲:ジュール・スタイン
脚本:アーサー・ローレンツ
演出:クリストファー・ラスコム
 

大阪公演

|日時|2023/05/04(木・祝)~2023/05/07(日)≪全6回≫
|会場|森ノ宮ピロティホール
▶▶ 公演詳細
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