2022/10/19
インタビュー
――今回のツアータイトルに込められた思いは?
「ここ数年、私に限らず世界中のエンターテインメント業界が新型コロナウイルス感染症の感染拡大で急ブレーキがかかった状態になっていました。普段どおりの活動や表現ができない中、せめてみなさんとコンサートでお会いしたときは、『あ〜、いい時間だった!』と感じていただきたい。そんな気持ちを“Good Time”という言葉に込めました」
――選曲や構成のこだわりを教えてください。
「2022年は企画ライブ『パイナップルロマンスのその先へ“雨のバカ~”2022』やカバーアルバムに伴うライブで、例年以上にさまざまな楽曲を歌ってきました。そういった活動をふまえてオリジナルからカバーまで幅広い楽曲を聴いていただけたらと思っています。あと、ステージに設けた架空のBARにメンバーを迎えるコーナーは、今回、Cafeにリニューアルしてお届けします。こちらもぜひ楽しみにしていてください」
――コンサート会場ではファミリー層の姿も頻繁に見られ、二世代に渡って美里さんの歌が愛されていることを実感します。
「私は18歳でデビューして、翌年にはスタジアムの大舞台に立たせていただくようになりました。当時、客席にいた同年代の男の子や女の子が次第に大人っぽくなり、結婚してお子さん連れの方も出てくるように。私もコンサート会場に託児所やファミリーシートを設けるなど、ご家族で楽しんでいただくための取り組みをしてきました。こういったお客様の移り変わりを見るのは本当に感慨深いです。最近でも20代の人が私のコンサートを初めて見に行きますとメッセージを送ってくれて、新しい世代にも自分の歌が届いていることが嬉しいですね」
――近年はソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉さんがバンドマスターを務められています。奥野さんとのコンビネーションはいかがですか?
「実は私、ソウル・フラワー・ユニオンが大好きで、コンサートの制作スタッフとも『奥野さん、いいよね〜』という話をずっとしていたんです。2016年に『ROOTS66』というライブイベントで共演させていただき、強者ぞろいの出演者を見事にまとめ上げる姿を見たら『もう絶対にこの人だ!』と思って。お忙しいことは承知でバンドマスターをお願いしたら引き受けてくださり、6年目に突入しました。同世代なので音楽やカルチャー面の共通項も多く、波長が合いますね」
――コロナ禍でコンサート全般に制限があった時期を経て、今回はライブに対する喜びをお客様と共有するようなツアーになりそうですね。
「私、2020年が35周年のアニバーサリーで、ツアーもたくさん予定を組んでいたけど、ほとんど開催できなくて。デビュー以来、初めてステージに立たない、音を響かせない1年を経験して気持ちのダメージも大きかったし、普段の活動のありがたさを改めて噛み締めました。2021年は奇跡的に全公演、中止せずツアーをやり遂げられたので、今回はその喜びをさらに大きな形でみなさんと分かち合いたいですね」
――2023年1月には関西公演も予定されています。
「関西のお客様はとても熱狂的。私もエネルギーを持っていかれないよう、しっかり準備して、良いコミュニケーションができるように頑張ります!」
――2022年9月14日には新曲『愛がお仕事』がリリースされました。こちらの聴きどころについて教えてください。
「作曲は『青い鳥』『ココロ銀河』などでご一緒してきた川村結花さんで、今回初めて歌詞も共作させていただきました。川村さんも私も犬が好きで、一緒に暮らす動物、子どもさん、ご夫婦、パートナーなど大事に思える相手に語りかけるような、心温まる楽曲にしたいねと話しながら作りました。編曲は奥野さんにお願いして、ソウルフルなテイストと可愛らしさが融合したサウンドに仕上げられたと思います」
――2022年でデビュー37周年を迎えられました。40周年も見えてきた中で今後の展望は?
「ここ数年は自分がやりたい音楽性をとことん追求する環境が整ってきました。その一方、カバーアルバムで洋楽・邦楽問わず、たくさんの素敵な楽曲を歌い、オーケストラやクインテットとの共演ライブも行うなど、幅広い経験をさせていただいています。オリジナル曲を心血注いで作ることはもちろん、世界中にある名曲もどんどん自分のフレイバーでお届けしていきたいので、これまで以上にボーカリストとしての可能性を磨き続けたい。40周年を迎えた時に現役で『これが渡辺美里だよね!』という作品を届けられるような歌い手でいたいですね」
TEXT:伊東孝晃