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恒例の独演会で、立川志の輔でしか得られない落語体験を!

2022/8/17

その他

志の輔らくご in森ノ宮 2022

9月1日(木)~4日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて『志の輔らくご in森ノ宮 2022』が開催される。こちらは2010年の同ホールお披露目公演として行われた『立川志の輔独演会』以来、大阪で数日間にわたって開かれる恒例の落語会で、今年で12回目を迎える。高座では、オリジナルの新作落語と古典落語をたっぷり口演。演目は幕が開くまでお楽しみというだけに、今年はどんな噺を用意してくれるのか、期待が募る。

今年、公開された中井貴一主演の映画『大河への道』は、江戸時代に日本で初めて実測による日本地図を完成させた伊能忠敬の物語だが、その原作となったのが志の輔が4年の歳月をかけて完成させた創作落語『伊能忠敬物語 -大河への道-』だ。5月には映画公開に先立ち、大阪・フェスティバルホールで同作を披露。サゲまで演じ切った志の輔に満席の客席からは惜しみない称賛の拍手が贈られた。

この創作落語『伊能忠敬物語 -大河への道-』も2018年の『志の輔らくご in森ノ宮』で披露しており、毎回、注目作、話題作を聴くことができるのも醍醐味の一つだ。

志の輔の落語は、満員の観客を乗せた大きな船が静かに岸を離れるようにして始まる。初めて聴く人は、船がすでに岸を離れていることに気づかないかもしれない。船長であり水先案内人の志の輔は、船上から見える丘の景色をあれやこれやと楽しく聞かせてくれる。

言うならばここまでがマクラ。さて、本題に入りますよと促された時には目の前に“志の輔らくご”という大海原が広がっている。船は時にゆっくりと穏やかに、時に大波に揺られながら、緩急あるスピード感で心地よく進んでいく。

特に古典落語の場合は、落語の世界へグーっと入り込んだかと思えば、ハッと現実世界へ観客を引き戻し、物語の中で起きている出来事を懇切丁寧に解説する志の輔。それだけに初めて落語を聴く人も“迷子”になることがなく、しっかりと噺の世界を楽しめる。

志の輔の落語を聴いているとき、私の目には落語の世界だけが映っている。音の強弱や様々な擬音、細かな人物や風景描写で、にわかに目の前に映像が立ち上がり、登場人物や背景が動き出すのだ。舞台の上で、私が思い描く江戸時代の人たちや現代人たちが生き生きと躍動している。それだけに、実のところ志の輔がどんな顔で口演していたのか全く覚えていない。だが、威厳のある声、ささやくような声、朗らかに場を和ませる声…と、志の輔の声だけはしっかりと耳に残っている。そんな表情豊かな声色で、自分だけの映像はさらに鮮やかになる。

映画でもない、舞台でもない。落語なのだが落語を越えた映像というべきか。いや、まさにそれこそが“志の輔らくご”か。高座にいる志の輔に導かれながら、自分の脳内に立ち現れる落語の世界に没入していく。“志の輔らくご”でしか得られないこの体験がいつも楽しみでたまらない。それだけに、観終わった後につくづく思う。「志の輔さんと同時代に生まれてよかった!」。


文:岩本和子

志の輔らくご in森ノ宮 2022

|日時|2022/09/01(木)~2022/09/04(日)≪全4回≫
|会場|森ノ宮ピロティホール

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▶▶ 映画『大河への道』公式サイト

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