2021/7/20
取材レポ
―――どんなお話になっていますか。
ボーイ・ミーツ・ガールwith超能力、みたいなお話です。虹郎君が予知能力の持ち主で、予言しようとすると屁が出ちゃうエスパーの役。のんちゃんはテレパシーを使って人に思いを伝えられるけど、顔がすごく不細工になる。恥ずかしいからお互いに今は能力を封印している。他にも超能力者はいるけど、主にこのふたりがこの世の悪と戦うために、ハンディキャップを克服しながら能力を使って、世界を救うという話です。僕の役は85歳の元パンクロッカー。リアルに2055年まで生きてたら85歳なので。そこはパラレルワールドじゃないですけど、未来がこうだったら面白いなというのをこのシリーズでは一貫してやっています。
―――屁が出るのはひとりでしょうか?
屁は虹郎君だけです。羞恥心と葛藤があると良いなと思って。虹郎君の役はのんちゃんの役のことが好きで、好きな子の前で屁が出ちゃう。世界を救いたいけど屁がでるのは嫌なんだという話ですね。虹郎君が未来を予言する時に屁が出ることに目を付けたのが、藤井隆さん演じる人気シティ・ポップ歌手。屁の音で未来を占う、初音ミクみたいな。屁の音を音響的にボーカロイド的に加工して、屁が歌ってるみたいな感じになる(笑)予定です。
―――のんさんとは、NHK朝ドラ『あまちゃん』(13年)以来のタッグです。
なかなか気軽に誘えないというか。僕のキャリアの中でも重要な作品のヒロインなので。アキというキャラクターも彼女が演じたからああなった。そう書くしかなかったというか、彼女にしかできない表現があると思っています。特別な女優さん。一緒にやるならちゃんと取り組みたいなと思っていたので、今回、満を持してお誘いしました。こっちは結構重い感じでオファーしたんですけど、「はい」ってわりと軽く引き受けてくれました(笑)。演出するのは今回が初めて。すごいコメディのセンスの持ち主だと思っているので、そこを惹き出せたらいいなと。
―――冒頭にある「この世の悪」は、明確なキャラクターが出て来ますか?
明確に言うと、藤井さんの役も悪くない。なんか上手く言えないんですけど。いま世の中が色んなことに対して不寛容というか。「みんなガマンしてるのに、お前はガマンしねえのかよ」とか。何となくお互い見張られているような緊張感があるじゃないですか。戦争があって、東京の人口が100分の1に減っちゃったという設定なんですけど。生き残ったのがどっちかっていうとマイノリティーの人たちで。虹郎君やのんちゃんの役もホームレス。そういう虐げられている人たちが立ち上がる。彼らの能力を利用しようとするのが藤井さんの役なので、だから悪いヤツなんですけど。でも本当に悪いのは、世の中の不寛容なムードなのかなと。そういう差別やムードに対して最終的に立ち向かうというのがテーマなんですよね。
―――前回同様、音楽は怒髪天の上原子友康さんによるオリジナル。楽曲はどんな感じでしょうか?
上原子さんには幅広く作っていただこうと思っています。藤井さんの役がシティ・ポップのアーティストなので。のんちゃんも歌ったりギターを弾いたりするので、よりロック色が強くなるのかな。 今のところはバラエティに富んでいる気がします。
―――生の舞台にこだわった趣向も考えていると伺いました。
今回、客いじりが全くできないので、その代わりとして来てくれたお客さんが楽しめる趣向は考えています。いつもの2、3倍楽しい公演にしたいと思うので、思い切り笑いたい人はぜひ。万全の体制でやるので、安心して楽しんで頂きたいなと思っています。
取材・文:石橋法子
■作・演出
宮藤官九郎
■音楽
上原子友康(怒髪天)
■出演
のん/村上虹郎/三宅弘城/荒川良々/伊勢志摩/
少路勇介/よーかいくん/YOUNG DAIS/
宮藤官九郎/藤井隆
2021/09/04(土)~2021/09/12(日)≪全10回≫
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
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