2024/7/27
インタビュー
――蔵さんのご経歴を教えてください。
「私は英国ロイヤル・バレエ・スクールで2年学んだのち、英国ロイヤル・バレエ団に入団し、バレエダンサーとしては17年おりました。その後、バレエスクールのゲスト教師時代を挟んで専任教師になりまして、約30年、ロンドンにいたんですね。その間にバレエ教育学や指導法、メソッドを学び、ロシア、アメリカに、イタリア、スペインなどでたくさんのメソッドを学びました。そして2023年8月末に日本に戻って来まして、9月にKバレエ アカデミーとKバレエ スクールの校長に就任しました」
――関西発のワークショップは、どんな内容になりそうですか?
「熊川哲也ディレクターが英国ロイヤル・バレエ団で築き上げた経験と、私が受け継いだものをまとめたものになります。ロンドンでも本当に30年間、死に物狂いで頑張ってきましたので、その経験と熊川ディレクターの踊りを徹底的に分析した結果を凝縮したのが熊川メソッドですね。特に背中からの動きをメソッド化しているのですが、これは唯一のオリジナルメソッドです。そういうものをお伝えします!」
――熊川メソッドでは何を一番、重要視していますか?
「熊川ディレクターが求めるのは目です。バレエダンサーに何が一番必要かというと、ビジュアライゼーション、視覚能力です。何が良くて何が正しいか自分で判断できる能力がまず必要です。だからいいダンサーを見なきゃだめだと。そして聴覚能力。ディレクターは生の音楽にもこだわります。そしてもうひとつが運動感覚能力。この3つの感覚を大事にして、子どもたちに教えています」
――聴覚能力のお話の時に『大きい声も大事』と。声と踊りにはどんな関係があるのでしょうか?
「人とコミュニケーションをとるとき、目を見て、声を使いますよね。そのコミュニケーションがバレエでも大事です。舞台人として客席とコミュニケーションを取りましょうと。Kバレエスクールでも、発声練習をして、自分の名前を大きな声でどれだけ言えるかということもやっています。『自分の限界知らなきゃいけない』とかよく言うじゃないですか。でも本当に自分の限界までさせていますか? いろんな限界がありますよ。手の筋肉、足の筋肉。その限界、殻を破ること。最初に殻を破るのが声なんです。あと、緊張すると呼吸が止まりますから、どんな時でも呼吸を止めないようにと、常に声を出す練習をしています」
――校長に就任されて間もなく1年ですね。これから多くのバレエダンサーを輩出されると思いますが、今はどんなお気持ちですか?
「本当に楽しみでしょうがないです。私は12年ちょっとの間、英国ロイヤル・バレエスクールで教えていましたが、みんなプロになっていきました。ハイレベルの学校で教えている教師はもちろんみな生徒全員にプロフェッショナルダンサーになってほしいと思いますが、それは簡単なことではなくて。プロとして舞台に立つまでの道のりは本当に大変ですが、そこまでたどり着けるように、一人でも多くのダンサーを輩出したいなと毎日、思っています!」
――どのようなダンサーが将来、活躍すると思われますか?
「先ほど言った視覚能力、聴覚能力、運動感覚能力を養ったうえでのクリエイティビティ、創作能力のある子ですね。自分がどのように、どうやって動けるのかということが分かる人が上手になっていくんじゃないかなと。自分を持っていることがすごく大事だと思います。熊川ディレクターも、ロンドンいた時から本当に自分自身のことを客観的にみていましたね。もちろん誰でもトライ・アンド・エラーはあると思います。でも、まずやってみる。だから、子どもたちにはたくさん動いてもらいたいと思っています。子どもたちが踊れる場所を提供するというのも私の目標のひとつです」
――蔵さんは情熱的で、今、お話を聞いていてもつい引き込まれますね。
「引き込むのが私の仕事ですから(笑)。ワークショップも面白いと思いますよ。絶対、関西の方にも楽しんでもらえると思っています!今、バレエのメソッドは、ヨーロッパやアメリカなどたくさんの国で新しいスタイルが成立しています。そんな中で、なるべく効率的に、子どもたちの技術を伸ばすだけではなく、Kバレエスクールでは社会人として育てるためのレッスンもたくさん考えられているんですよね。そういったこともこの2日間で少しでもシェアできたらいいなと思います。日本で一番熱い夏、バレエの夏、ここにあり!というワークショップにしたいですね」
取材・文=岩本和子