2023/7/27
インタビュー
明るく透明感のある温かな歌声、そして確かな歌唱力。井上は誰もが知る『となりのトトロ』の主題曲を35年間歌い続けている。何回も見ている映画は「見るたびに印象が変わって、色あせないですね。日本の原風景を表していて、みんなが心の中に持っている子供の心や家族愛が描かれる、ほのぼのとした作品で。日本人だけでなく、みんな好きなんじゃないかなと思います。海外コンサートでいろいろな国に行った時、みなさん映画やDVDで『トトロ』を見ていらしてて、トットロ、トットロって歌ってくださるんですよ(笑)」。
7月5日に、記念アルバム「ジブリ名作セレクション Dear GHIBLI Ⅱ」をリリースした。「今でもみなさんがすごく愛して、見続けている作品って数少ないと思うんですよ。『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』とか、ずっと歌い続けて行ける曲に巡り合って、40年コンサートを続けて来られた。すごいことだと思うので、大事にしていこうと思っています」。『ラピュタ』を歌ったのは21歳。「その時の声を出してと言われると難しいですが、なるべく皆さんのイメージから外れないように。キーは変えずに歌いたいと思っているので、夏は冷房に気を付けて喉の調子をケアしつつ、カバーしていきたいと思っています」。
「今年40周年でコンサートが多い中、今回は初めて大阪交響楽団さんとコンサートできるのがうれしいですね。それに(松本)梨香ちゃんとオーケストラのコンサートで共演するのは初めてで、一緒に歌う歌もたくさんあるので、それも楽しみです」。オーケストラは普通のバンドと曲のアレンジが違う。「梨香ちゃんの歌う『めざせ!ポケモンマスター』の大阪交響楽団さんのアレンジは、すごく素敵で、かっこよかった(笑)。バンドとはちょっと違った感じで、子供たちはびっくりするんじゃないかな。オーケストラ用のアレンジはとても大変なので、今回はそれも聴いてほしい。小さなお子さんがオーケストラを聴く機会は少ないと思うので、みんなが好きな歌が大勢の楽器が集まるフルオーケストラの演奏になると、こんなに迫力があるんだということも知ってもらえるいい機会だと思っています」。
まずは「天空の城ラピュタ」の挿入歌『君をのせて』。「この曲がオーケストラだと大迫力になると思うので、是非、聴いていただきたいですね。久石譲さんの作曲でオーケストラ用に作られているので、とってもいいと思います」。もう1曲は、小学校の卒業式などでよく歌われる『ビリーブ』。「アニメの曲ではないですが、子供たちがみんな知っている曲で、いろいろなオーケストラさんが演奏なさっています」。子供の頃に歌っていたが、大人になって改めて歌詞を聞くと心に響く。そんな声も多い曲だ。
井上と笑顔がそっくりの娘・ゆーゆ。6歳で作成したデモテープから、2012年にNHKみんなのうた『6さいのばらーど』でデビューした。今、18歳となり、大阪交響楽団と3年ぶりの共演。「とても心強いし、うれしい」と母娘出演を喜ぶ井上と一緒に、「となりのトトロ」のオープニング主題曲『さんぽ』を歌う。「『さんぽ』は、コンサートの最初に歌う曲ですが、ここでみんなが大きな声で歌ってくれたら、つかみはOKみたいな感じの曲です(笑)」。コロナ禍では声出し禁止のため、リモートコンサートが多かった。解禁された最初の頃は「みんな全然歌ってくれなくて。声出しちゃいけないと言われていたら、こんなに歌えなくなっちゃったんだって思いましたけど、今は元通りに歌えるようになって来て。子供たちの大きな声で、あぁ、日常が戻って来たんだなとわかります。今回も、きっと大きな声で歌ってくれるだろうと思うので、すごく楽しみです」。この『さんぽ』は、合唱曲としてママさんコーラスなどでも歌われている。「おばあちゃまに『この曲は一番初めに、大きい声出そうねっていう時に練習する1曲なのよ』なんて言われて、うれしかったです」。
大阪交響楽団とは初共演。さらに指揮者の齋藤友香理とも初顔合わせ。「大阪交響楽団さんはとても上手なプロのオーケストラさんたちなので、きっと楽しんでもらえますし、女性の指揮者の方ともこれまでやったことがないので、どんな指揮をされるのか楽しみです」。松本とのオーケストラでの共演も初めてであり、また、会場となる兵庫県立芸術文化センターも初めての登場。「めちゃくちゃ楽しみです。私、新しいこと大好きなので(笑)。自分が楽しめないと、皆さんに楽しんでもらえないでしょ」。
トークは「梨香ちゃんはプライベートも友達なので、トークがなるべく脱線しないように、ハチャメチャにならないように(笑)。きちんとトークしたいと思っています」。クイズコーナーもある。「『となりのトトロ』から質問するクイズコーナーも少し入っています。お客様にも参加していただける構成になっているので、音楽だけじゃなく、お話を聞きに行く、クイズに参加する、みんなで歌いに行く! みたいな感じで楽しんでいただけたら」。
「小さなお子さんも知っている聞き馴染みのある曲ばかりです。同じ曲だけどオーケストラのアレンジで違った感じで聴いていただけると思いますし、お父さんもお母さんも、二世代三世代の親子で楽しめる内容になっているので、是非、たくさんの方に来ていただきたいです。ただ、せっかくのオーケストラなので、ちょっとオシャレして来てほしい。夏休みの思い出の1ページになるような、そんなコンサートにしたいと思っています」
取材・文=高橋晴代