中井貴一VSキムラ緑子
究極のキャスティングで、
最高に面白い小説が最高に面白い舞台に…
内館牧子終活小説の第一弾、「終わった人」。
内館牧子の筆はさえにさえている。
快調に突っ走った田代壮介の人生は、50歳に差し掛かったところで急ブレーキ、
いきなり窓際にとばされ、そのまま定年退職。
毎日が大型連休、何もやることがない。退屈で死にそうだ。「定年って生前葬だな」
「恋をしたら」と娘、「そうよ、恋よ、リタイアした人こそ、恋が生きる活力」と妻。
「くそ、バカにしやがって。俺は、ネバーギブアップの男だ!!」
そこに最高の仕事と最高の恋の相手があらわれる。
それからの人生がジェットコースター、舞い上がったり、舞い降りたり。
しかしジェットコースターは急停車。勝負をかけた女には手ひどく振られ、
引き受けた会社が突然の倒産、牢獄のような人生が残された。
これぞまさに内館牧子のエンターテイメント!
この運命を真正面から受けて懸命に生きていく壮介を演じるのは中井貴一。
「ああ身につまされる!」
そして内館牧子の手による女はどれもこれも手ごわい。
愛人にしようとするがどこまで行ってもメシだけオヤジを卒業させてくれない久里。
すべてを見通している娘道子。カッコイイバーのマダム美砂子。
牢獄の番人となる妻の千草。
「この男は夫婦で積み上げてきたお金を、一瞬でダメにした。
どうしてやろうか、こいつ。楽になんかしてやるもんか!」
その女たちをキムラ緑子が一手に引き受け、自在に壮介をひきまわす。
見所いっぱいの小説が、二人の役者によって、見所いっぱいの舞台になる。
一幕 ©山本倫子
二幕 ©山本倫子
■原作
内館牧子「終わった人」(講談社文庫)
■出演
中井貴一、キムラ緑子
■台本/演出
笹部博司